Reconsideration of the History
142.天下の愚法『反分裂国家法』に見る中華人民「狂」和国の思考回路 (2005.3.21)

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「中国」(支那)の国会に当たる第10期全国人民代表大会(全人代)第3回会議に上程されていた『反分裂国家法』(反国家分裂法)が、全人代最終日の2005(平成17)年3月14日、圧倒的多数の賛成で可決成立しました。この法律は、現実的に主権独立国家として存在する「中華民国」(台湾)が正名(名を正す事)し「台湾共和国」として「独立」する、「中国」にとっての最悪の事態を阻止する為に、「平和統一、一国両制(一国二制度)」の基本方針を指導理念とし、所謂(いわゆる)「一つの中国」の原則を貫徹、場合によっては「台湾問題」の軍事的解決をも辞さない、と言う断固たる決意の表れ ── であるとされています。実際、「中国」は台湾を自国の領土であると主張し、自らの主権が及んでいない台湾が、名実的に「独立」する事を絶対に認めない。その為には、「武力行使も辞さず!!」との考えでいます。しかし、台湾に対する「中国」の身勝手な論理と言い、今回成立した『反分裂国家法』と言い、私から見れば、到底、「中華人民『狂』和国」の戯言(たわごと) ── 狂人(パラノイア)の妄言にしか思えません。又、それと同時に、この様な法律を制定しなければならない所に迄、追い詰められた「中国」の真の姿も浮かび上がってきます。と言う訳で、今回は、「中国」が成立させた天下の愚法『反分裂国家法』について、書いてみたいと思います。

「中国」が成立させた『反分裂国家法』とは具体的にどの様な内容(条項の詳細)なのか? 関心のある所ですが、実は、驚くべき事に成立させたにも関わらず、『反分裂国家法』の条項を「中国」は公表していないのです。日本を含め、近代法治国家たるものは、必ず、法令対象者に対しては当然として、広く外国に対しても、その条項を開示するものです。しかし、「中国」は、その対象が台湾であるにも関わらず、台湾政府に対しても、台湾公民(国民)に対しても、開示してはいません。つまり、『反分裂国家法』なる法律は、具体的条項を明かさない「秘密法」である訳です。「人治の国」と称される「中国」とは異なり、法治が定着している日本や台湾には、全く以て理解し難い次元の話です。

(さて)、「秘密法」である『反分裂国家法』ですが、香港のメディア等から漏れ伝わってくる情報を組み合わせると、

  1. 「統一」が両岸(「中国」と台湾)関係の唯一の選択肢
  2. 「中国」による一方的な「反国家分裂」の定義とその範囲の制定
  3. 「独立」又は「国家分裂行為」と見なされる要件並びに、それに対する法的責任と罰則の規定
を規定し、その上で、
  1. 台湾当局(政府)が独立を宣言
  2. 台湾で動乱が発生
  3. 台湾に対する外国勢力の武力介入
と言った事態が発生した際には、人民解放軍・武装警察隊・民兵に『非平和的手段』 ── つまり、武力行使によって問題を解決する権利を付与する、と謳(うた)っているとの事です。

日頃から「中国」は、

「台湾が独立を宣言したら武力行使する」
と言ってきましたし、2月19日、ワシントンD.C.での日米外務・防衛閣僚による安保協議委員会、所謂「2プラス2」に於いて合意・採択された『日米の共通戦略目標』に、
「台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す」
との文言が入れられた事に見られる様に、「台湾問題」に日米と言った外国勢力が関わる事態を避ける為にも、又、台湾を「自国の領土」と主張してきた経緯から「台湾問題」をあくまでも「内政問題」として処理する為にも、今回の『反分裂国家法』制定は「中国」にとって必要不可欠だった、と言った所なのでしょう。しかし、それは、あくまでも「中国」にとって極めて都合の良い「身勝手な論理」でしかありません。

は、嘗(かつ)て、『4.台湾は中国の一部ではない!』(1997.3.8)や、『101.「割譲」の意味を知らない支那 ── 「台湾問題」に見る支那の矛盾』(2002.4.7)等のコラムを通して、台湾に「中国」=「中華人民共和国」の主権が及ばない事を主張してきました。改めて書きますが、国共内戦を制した毛沢東が、1949(昭和24)年10月1日に樹立した「中華人民共和国」は、「自国の領土」と主張する台湾を、今日(こんにち)迄、建国以来一日たり共、統治した事はありません。いや、統治云々以前に、抑(そもそ)も、蒋介石は国共内戦に敗北したと同時に、「中華民国」ごとそっくり台湾に移転してしまった訳で、此処(ここ)で台湾が改めて「独立」を宣言しようが、しまいが、最初から独立主権国家として存在していた訳で、その台湾に対して、「中国」の単なる「国内法」でしか無い『反分裂国家法』を適用しようとする事自体がそもそも滑稽である訳です。その様な視点で捉えると、『反分裂国家法』は「中国」が世界に晒(さら)した「天下の愚法」と言えますし、又、その様な法律を真顔で制定した「中華人民共和国」とは、正に、

中華人民「狂」和国

と言っても過言では無いでしょう。とは言え、別の視点から『反分裂国家法』を眺めてみると、全く異なった「中国」の実情が見えてきます。

回、「中国」が制定した『反分裂国家法』の適用範囲は、大陸と台湾(の人民・企業・団体・公務員)とされています。つまり、この法律の矛先は、何も台湾に限定している訳ではありません。たまたま、「台湾問題」の比重が大きいと言うだけであり、同法に定義されている「独立」又は「国家分裂行為」と見なされる要件が満たされれば、分離独立運動が盛んなチベット自治区新疆ウイグル自治区、独立志向の強い広東省や東北三省(満州)と言った大陸部(本土)の地域にさえ、その矛先が向く訳です。そして、その事は裏を返せば、経済発展が著しい臨海部と、発展から取り残され未だに貧しい内陸部の経済格差 ── 言い換えれば、「中国国内に於ける『南北問題』」や、余りにも肥大化し過ぎたが故に、隅々に迄、統制が行き届かず、自己矛盾と機能不全に陥ってしまった共産党一党独裁体制下の「中国」が、見かけの発展とは裏腹に、常に内部崩壊(国家分裂)の悪夢に呵(さいな)まれている姿を浮かび上がらせます。

中国崩壊

(か)のソビエト連邦でさえ、多くの人々は、よもや内部崩壊する等とは思ってもいませんでした。しかし、実際にソ連は崩壊してしまいました。その様に考えると、「中国」の崩壊もそう遠くない日に訪れるのかも知れません。果たして、2008(平成20)年の北京五輪迄、「中国」が保(も)っているかどうか? ひょっとしたら、「まさか!!」・「青天の霹靂(へきれき)」と言った事態に向けて、歴史の歯車は既に回り始めているのかも知れません。


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