Reconsideration of the History
195.チベットに「自治」等いらない!! ただ「独立」あるのみ!! (2008.4.26)

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ダライ-ラマ14世 ベットを巡って、「中国」(支那)は「チベットは中国固有の領土であり、祖国分裂(分離独立)活動に対しては断固として対処する」と強硬姿勢を貫き、一方の当事者であるダライ-ラマ14世(左写真)は「我々が求めているのは分離独立ではない、高度な自治である」と主張しています。然(しか)し、今迄、私が小論で幾度と無く指摘してきた通り、「中国」は西蔵(チベット)自治区に対して、チベット民族の「自治」を認めた事等、唯(ただ)の一度もありません。それは『チベット十七ヶ条協定』の空文化や、パンチェン-ラマ11世の選定を巡る暴挙(詳しくは、『99.「チベット17ヶ条協定」に見る「一国両制」の欺瞞』を参照の事)を見れば一目瞭然の事です。ところで、自分達(チベット民族でありチベット仏教の信者)にとって最も尊く信仰の対象ですらあるダライ-ラマ14世が、平和的且つ静的な運動を通して自治権を求めているのに対し、何故(なぜ)、「中国」国内のチベット民族は蜂起し、そして、「中国」からの分離独立を求めているのでしょうか? そこには「残された時間」を憂(うれ)う一種の焦(あせ)りがあるのです。と言う訳で、今回は、チベット民族が最も危惧する事態に触れる事で、何故(なにゆえ)、チベット民族が「中国」からの分離独立を求めているのかを明らかにしてみたいと思います。

故、「中国」国内のチベット民族は分離独立を求めているのか? その要因の一つは、実はダライ-ラマ14世自身にあるのです。ダライ-ラマ14世 ── 本名 ガワン=ロサン=イェシェ=テンジン=ギャツォ ── がこの世に生を受けたのは 1935(昭和10)年7月6日。テレビに映るダライ-ラマ14世は、身振り手振りを交え流暢な英語を操り見た目には若く見えますが、何と当年とって73歳のご老体。現在のチベット民族の平均寿命がおよそ67歳である事を考えると、ダライ-ラマ14世が如何(いか)に高齢であるかが分かります。チベット民族の平均寿命が50年前の35歳前後から大幅に延び、100歳を超える高齢者も少なくありませんが、それを差し引いたとしてもダライ-ラマ14世にもそう遠くない将来、「お迎え」(崩御)が訪れる事には変わりありません。そして、その「Xデイ」をチベット民族は最も恐れています。それにしても、何故、チベット民族はダライ-ラマ14世の死をそれ程迄に恐れるのか? それはチベット仏教の最高権威者であるダライ-ラマの選定方法にあるのです。

ダライ-ラマ13世 ライ-ラマの選定方法。それは日本に於ける皇位継承や、日本仏教の各宗派最高指導者(座主(ざす)や法主(ほっす)、貫首(かんじゅ)や管長等)の選出方法とは全く異なる方法に拠ります。例えば、皇位継承の場合、新帝の践祚(せんそ 即位)と同時に新皇太子が立ち、天皇が崩御(ほうぎょ)すると皇太子が直ちに践祚すると言う事を繰り返し、皇位に空白が生じない様に図られます。又、日本の仏教各宗派に於いても、最高指導者が遷化(せんげ 逝去)すると、日を置かずして宗門(しゅうもん)の高僧の中から新たな指導者が選出されます。然し、チベット仏教の各宗派ではこの様な方法は採られません。ダライ-ラマ14世が崩御したからと言って、側近の高僧の中からダライ-ラマ15世が選出される訳では無いのです。チベット仏教では、ゲルク派のダライ-ラマやパンチェン-ラマ、カギュ派のカルマパと言った活仏(リンポチェ)の世代継承は、何(いず)れも「転生(てんしょう)」と言う独自の方法に拠って行われます。「転生」とは、「輪廻(りんね)転生」と言う言葉を皆さんも一度は聞いた事があると思いますが、要は「亡くなった人の霊魂が新たな肉体に宿り、全くの別人として再びこの世に生を受ける」事を言い、チベット仏教の活仏も亡くなると時を経ずして別の人として誕生するとされ、ダライ-ラマ14世が崩御したとしても、直ちにダライ-ラマ15世が即位する事はありません。実際、ダライ-ラマ14世自身も、先代ダライ-ラマ13世:右上写真)の崩御から7年後、ダライ-ラマ13世の生まれ変わりと正式に認定され、はじめて即位しています。ですから、ダライ-ラマ14世の崩御からダライ-ラマ15世の即位迄は数年の空白が生じる事になる訳です。

ころで、ダライ-ラマ14世の崩御後、一体誰がダライ-ラマ15世を選定し即位させるのか? 普通に考えれば、ダライ-ラマがチベット仏教ゲルク派の最高位活仏である事から、ゲルク派内、若(も)しくは拡大してチベット仏教界の中で為されると思いますよね。そう、それが当然の事なのです。然し、その当然の事が今の儘(まま)では行われない公算が非常に大きいのです。そして、それをチベット民族は最も危惧しているのです。

真パンチェン-ラマ11世(ゲンドゥン=チューキ=ニマ)
ダライ-ラマ14世認定のパンチェン-ラマ11世
(ゲンドゥン=チューキ=ニマ少年)
偽パンチェン-ラマ11世(ギェンツェン=ノルブ)
「中国」政府公認のパンチェン-ラマ11世
(ギェンツェン=ノルブ少年)
1989(平成元)年、ダライ-ラマに次ぐチベット仏教の高位活仏だったパンチェン-ラマ10世が逝去しました。そして、その6年後の1995(平成6)年、ダライ-ラマ14世は、当時6歳のゲンドゥン=チューキ=ニマ少年をパンチェン-ラマ11世として認定したのですが、何と「中国」政府はこの選定を否認し、ニマ少年を両親共々、拉致拘束した上で、同じく6歳のギェンツェン=ノルブ少年をしてパンチェン-ラマ11世に据えたのです。因(ちな)みに、ニマ少年一家の拉致について、「中国」政府は当初関与を否定していましたが、翌1996(平成7)年に関与を認めています。但(ただ)し、ニマ少年一家の消息について「中国」政府は、今尚(いまなお)、生死も含め明らかにしていません。

(さて)、此処迄(ここまで)読まれた皆さんならもうお分かりでしょう。何故、チベット民族が、「高度な自治権」を求めるダライ-ラマ14世の意に反し、頑(かたく)なに「独立」を求めるのか? 「自治区」と言う名は付いているものの、現実には「自治」は無きに等しい「西蔵自治区」に於いて、「中国」政府はチベット民族の心の拠り所であるチベット仏教を手厚く保護するどころか介入弾圧。チベット仏教徒の崇拝対象であるダライ-ラマ14世の肖像写真は「中国」当局に見付かれば没収破却され、場合によっては所持していた人すら官憲に連行される。又、ダライ-ラマに次ぐ高位活仏のパンチェン-ラマ11世は「中国」の傀儡(かいらい)と化し、今此処(ここ)ダライ-ラマ14世が崩御すれば、「中国」はダライ-ラマ15世の即位に迄介入するだろう。そうなれば、チベットには独立どころか自治すら永遠に訪れないだろう・・・と。だからこそ、チベット民族は頑なに独立を求めている訳です。領土を奪われ、自治権を奪われ、更に心の拠り所である信仰迄奪われかねないチベット民族。そして、それを何ら躊躇(ためら)う事無く平然と行える帝国主義国家「中国」。であればこそ、我々は「中国」の暴挙を決して許さず、抑圧されたチベットの独立を断固支援せねばなりません。

本は北鮮(北朝鮮)による邦人拉致問題を今も抱えています。これは北鮮による日本人に対する極めて深刻な人権侵害です。日本は北鮮による邦人拉致問題の解決を世界に訴えてい乍(なが)ら、かたや「中国」によるチベット民族に対する極めて深刻な人権侵害にはそっぽを向く。果たして、これで日本は世界から信用されるのか? 支持されるのか? 自分達の事には熱心だが、他人の事(チベット問題)に対しては随分冷たい・・・正に「ジコチュー」(自己中心主義)だ!! その様な誤ったシグナルを国際社会に送らない為にも、そして、日本がアジアの大国として、暴走する帝国主義国家「中国」を掣肘(せいちゅう)する役割を果たす為にも、チベット問題の根本的解決=チベット独立を全面支援せねばならないのです。

「中国」も北鮮も共に人権を抑圧してやまない
一党独裁国家であると言う事実を
我々は再認識せねばならない!!
「中国」国旗 北鮮国旗

(了)


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