Reconsideration of the History
138.日中友好? 「中国」は日本にとっての仮想敵国である (2005.1.7)

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成16(2004)年12月18日、内閣府が、ある世論調査の結果を発表しました。題して、『外交に関する世論調査』。その調査項目の中に、この様な質問がありました。

中国に親しみを感じますか?

「中国に親しみを感じますか?」回答結果 この質問に対して、回答者の58.2%の人が、「親しみを感じない」(「親しみを感じない」及び「どちらかというと親しみを感じない」の合計)と答えました(右グラフ参照) これは、つまり、日本国民の10人中6人迄が、「中国」(支那)に対して何らかの違和感やわだかまり、嫌悪感を抱いていると言う事になる訳です。昨今の両国関係は、活発な経済交流に比べ外交面では冷え込んでいる「政冷経熱」等と言われていますが、昭和47(1972)年の「日中国交回復」以来、恐らく最悪の状況にある事だけは確かでしょう。理由は幾つもあります。「中国」で開催されたサッカー・アジア杯に於ける支那人サポーターの行儀の悪さ、再三、中止を要請しているにも関わらず、それを無視する形で繰り返されている「中国」海洋調査船による日本近海の海底探査、そして、未だ記憶も新しい「中国」海軍原潜による領海侵犯事件・・・。「中国」側は、小泉総理の靖国参拝や、「歴史認識」問題を俎上(そじょう)に挙げますが、例え、それらを差し引いたとしても、如何に「中国」が日本との間にトラブルを起こしているかが分かります。これに対して、「親中派」や進歩的文化人を中心に、「日中友好」の旗印の下(もと)、日本が隠忍自重(いんにんじちょう)したり、ある種の「譲歩」をすべきと考えている日本人が少なからずいる訳です。そう言った人達に私は声を大にして、こう喝破(かっぱ)します。

「中国」は日本にとっての仮想敵国である

と。と言う訳で、今回は、「平和ボケ」している日本人、「日中友好」を信じて疑わない日本人に対して、「敵国としての中国」をテーマに書いてみたいと思います。

「中国」は仮想敵国である!! 少々どぎつい言い方かも知れませんが、これは厳然とした事実です。何も、私が「支那嫌い」だから言っている訳ではありません。そう言うには、それだけの理由があるのです。例えば・・・領土問題。平成13(2001)年10月に発表したコラム94.『「お宝」目当ての領有権主張 ── 尖閣諸島問題』で取り上げた様に、「中国」は日本の領土である尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有権を主張、自ら『領海法』なる法律迄制定する力の入れようです。しかし、それだけでは飽きたらず、今度は、日本最南端の島「沖ノ鳥島」(東京都小笠原村)近海の日本側排他的経済水域(以下、「EEZ」と略)内に海洋調査船を派遣し、同海域の海洋調査を実施。この行動に日本側が抗議すると、

「『沖ノ鳥島』は「島」では無く単なる「岩」。故に、我が国(支那)は、日本側が主張する排他的経済水域は認めない。」
と反論。国際社会が「島」として認知し、日本が同島周辺海域にEEZを設定する事を認めているにも関わらず、「中国」はEEZを設定出来ない単なる「岩」である、と嘯(うそぶ)いている訳です。つまり、「中国」が何を言いたいのか?と言うと、極論すれば、沖ノ鳥島を日本の領土(島)として「認めない」し、同島周辺に日本が設定しているEEZをも認めない。認めない以上、「中国」がそこで海洋調査を含め、何をしようが、日本に文句を言われる筋合いは無い、と言っている訳です。これは、日本の領土・領海に関わる明らかな国家主権侵害です。

「中国」は仮想敵国である!! 次に挙げるとすれば・・・政治面でしょうか。現在、国連(the United Nations:連合国)機構改革の一環として、安保理(安全保障理事会)理事国枠の拡大が争点になっています。その中で、日本は、ドイツと共に新「常任理事国」の最有力候補となっている訳ですが、それに異を唱えているのが、隣国であり、現常任理事国である「中国」です。(南北朝鮮も不支持ですが) 国連加盟国の内、約70ヶ国(2004年12月時点)が、運営資金面で国連に多大な貢献をしている(分担金拠出額で実質第1位)日本の安保理常任理事国入りを明確に支持しているにも関わらず、「雀(すずめ)の涙」程(ほど)の分担金しか拠出していない「中国」が、「歴史認識」等と言う非常に曖昧模糊(あいまいもこ)としたものを理由にして不支持を表明している事実。日本は「中国」に対して、ODA(政府開発援助)・円借款等、資金面で莫大な支援をしているのですから、少しは恩を感じて、支持しても良さそうなものですが、実際には「不支持」。では何故「不支持」なのか? 本当に「歴史認識」問題が理由なのか? 「中国」にとっては、「歴史認識」問題があろうが無かろうが、小泉総理が靖国神社に参拝しようがしまいが、その様な事は正直言って、どうでも良い事なのです。つまり、こう言う事です。現在、国連安保理の常任理事国は、米・英・仏・露・中の5ヶ国ですが、この中で唯一、アジアから選出されているのが「中国」な訳です。まあ、「中国」からして見れば、自国以外の常任理事国が欧米組で構成されている以上、自国が「非欧米=アジア・アフリカ(第三世界)の代表」である、との自負が強い訳で、そこへ、G8のメンバーであり(昔風に言えば「列強」)、自国に比べて遙かに経済力がある(まだまだ、「腐っても鯛(たい)」)日本が入る事は、その地位を脅かす、いや自国に取って代わるであろう「明確な脅威」として認識している訳です。「国連」と言う名の「国際社会」に於いて、自国の地位が低下する事が目に見えているからこそ、日本の安保理常任理事国入りを支持しない。むしろ、日本の足を引っ張って、何とか安保理常任理事国入りを阻止したいと、と言うのが「中国」の本音でしょう。

「中国」海軍所属「漢級」原子力潜水艦 「中国」は仮想敵国である!! 最後に挙げるとすれば、やはり軍事面でしょう。平成16(2004)年12月10日、新「次期防」(次期中期防衛力整備計画)と共に閣議決定された新「新防衛大綱」(防衛計画の大綱)に、核開発・拉致問題等で対立している北鮮(北朝鮮)と共に、「中国」も名指しで取り上げられました

「北朝鮮の動きは、地域の安全保障における重大な不安定要因であるとともに、中国の軍の近代化や海洋における活動範囲の拡大などの動向には注目していく必要あり」(抜粋)
「中国」海軍所属「漢級」原子力潜水艦が航行したと見られる航路 これに対して、「中国」は猛反発した訳ですが・・・昨今の状況を勘案すれば、「新防衛大綱」に「中国」が取り上げられたのは当然の帰結と言っても良い訳です。例えば、前述の尖閣諸島領有権問題や、沖ノ鳥島近海を含めた日本のEEZ内での活動。そして、記憶も新しい平成16(2004)年11月10日の石垣島海域に於ける「中国」海軍所属「漢(ハン)級」原子力潜水艦(右写真)による領海侵犯事件(この事件について「中国」は、「遺憾の意」を表明したのみで、未だに明確な謝罪はしていない) いや、そればかりではありません。平成15(2003)年2月に発表したコラム114.『「最大の援助国」日本に照準を合わせている支那の核ミサイル』に於いても取り上げましたが、「中国」が「中日友好」の美名の下(もと)で、日本の主要都市に対して、核ミサイルの照準を合わせている事実。如何(いか)に「中日友好」等と言おうが、核の照準を合わせている以上、「中国」が日本を「敵国」と見なしている事は明白な訳です。つまり、どんなに日本が「日中友好」、「日中友好」等と言おうが、資金面で莫大な援助をしようが、「中国」にとって日本は、「敵国」(仮想敵国)以外の何ものでも無い訳です。そして、それは裏を返せば、日本にとっても「中国」が仮想敵国であると言う事に他ならず、だからこそ、「新防衛大綱」に於いて、北鮮と共に「中国」が名指しで取り上げられている訳です。

「中国」は、自国こそ「東アジアの盟主」(ここで言う「東アジア」とは、極東から南アジア迄が対象)であると言う強烈な自負心を持っています。それは、新たな「中華思想」と言い換えても良いものです。自国を中心にした東アジアの秩序(現代版「華夷秩序」)。そこに、「盟主」(リーダー)は二人(二国)も必要無い。この様な考えを「中国」が抱いている以上、日本がどんなに「日中友好」に腐心しても、端(はな)から結果は分かりきっています。「中国」が日本を仮想敵国として位置付けている以上、日本も又、「中国」を仮想敵国として認識した上で付き合っていかなければならないのです。最後に、とある国の政治家が言った、ある言葉を以(もっ)て締め括りたいと思います。曰(いわ)く、

自国以外の全ての国が仮想敵国である

と。


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