Reconsideration of the History
152.沖縄の主権帰属は未確定? 遂に本性を現した「中国」(2005.9.10)

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首里城 が、平成14(2002)年に発表したコラム『100.台湾は「日本の生命線」 ── 「台湾問題」の向こう側にある「もの」』の中で、「中国」(支那)自身が考えている、「本来あるべき中国の範囲」 ── 「潜在的中国領」について触れた際、日本の施政権が及んでいる「日本の領土」沖縄に対してさえも、「中国」が「潜在的中国領」 ── 何(いず)れ奪還すべき自国領として考えている、と言う事を書きました。その後、再三の中止要請にも関わらず繰り返されてきた日本側EEZ(排他的経済水域)内に於ける「中国」海軍所属海洋調査船による海底調査(資源探査及び潜水艦航行に不可欠な海底地形探査)、日本の領土「沖ノ鳥島」に対する日本主権の否定、「中国」海軍所属原潜による石垣島海域での領海侵犯、更には、東支那海でのガス田開発、と言った日本の海洋権益に対する「中国」側による侵害・挑戦行為は、年々、日を追う毎にエスカレートしていきました。その様な状況の中、平成17(2005)年8月1日、遂に「中国」側はその毒牙を白日の下に晒(さら)したのです。

「沖縄の主権帰属は未確定」 中国誌に研究者論文

 (2005年8月)1日発売の中国誌「世界知識」は、沖縄が日本の領土になったのは琉球王国に対する侵略の結果であり、第2次世界大戦後の米国からの返還も国際法上の根拠を欠き「主権の帰属は未確定」とする研究者の論文を掲載した。

 筆者の北京大学歴史学部の徐勇教授は、江戸時代まで琉球は独立王国であり、日本側も対朝鮮と同様の「外交関係」を結んでいたと指摘。1879年に日本が琉球を廃止し沖縄県を設置した際も、清朝は承認しなかったとした上で、第2次大戦後米国はポツダム宣言に基づく権利のないまま沖縄を管理下に置いたと説明している。

 論文はさらに、台湾の学者の意見を引用する形で、1972年に米国が日本に沖縄を返還したのは「2国間の授受であり、第2次大戦の連合国各国が共同で認めたものではない」として、「琉球の地位は未確定」と結論づけている。(共同)

(08/01 22:38)

これは、『産経新聞』の記事ですが、この論文の執筆者、徐勇・北京大学歴史学部教授が何を言いたいのか?と言うと、とどの詰まりが

沖縄は日本の領土では無い!!

と主張している訳です。以前(と言っても、昭和46(1971)年以降)から主張している尖閣諸島に対する領有権要求だけでは飽きたらず、遂に沖縄に迄(まで)魔手を伸ばそうとしている事は明々白々です。然(しか)し、「中国」には、いや、「中国」だからこそ決定的に欠けている「視点」があると言う事を、彼ら支那人が果たしてどれ程認識しているのだろうか?

「中国」は、1949(昭和24)年10月1日の建国(「中華人民共和国」成立)以来、今日(こんにち)に至る迄、一日たり共、実効統治した事の無い台湾に対する国家主権を主張し、台湾が「正名独立」(現在の国号「中華民国」を廃止し、新たに「台湾共和国」を称する事)等しようものなら、「武力解放」と言う名の「侵略」をも辞さず!!とのスタンスを崩していません。その上、更に「日本の領土」である沖縄の「領有」(侵略占領)をも窺(うかが)う構えの「中国」。然し、彼らには最も肝心な視点が欠如しています。それが一体何であるか?と言えば、それは「民意」です。

「中国」=「中華人民共和国」と言う国は、日本の様な複数政党制による議会制民主主義政体の国家ではありません。建国以来、人民解放軍を保有する中国共産党が唯一無二の指導的地位にある、党=軍=国家、と言う一党独裁国家です。人民の選挙を経て選ばれた議員によって構成された議会と、主として議員の中から選ばれた閣僚によって構成された政府が国政を運営する、日本では「当たり前」のシステムが、「中国」には存在しません。「中国共産党」以外の政党は一切認められず、党の指導的地位は永遠等と言う独裁国家には、抑(そもそ)も「民意」と言う概念自体が欠如しているのです。だからこそ、建国以来半世紀を経て尚、「自国領」と主張する台湾を「解放」する事が出来無い。何故なら、「解放」=「祖国復帰」に際して、最も大事な台湾公民の「民意」を汲み取ろとしない。台湾公民が「中国」への「復帰」を望んでいるのか? もし望んでいないのだとしたら、何が原因であり、何をどう改善すべきなのか? そう言った思考を「中国」はしよう共しない。そこへ持ってきて、「独立すれば、即武力解放」と言うスタンスでは、台湾公民が警戒・硬化するのは至極当然です。では、沖縄はどうなのか?と言えば、沖縄とて台湾と同じ事です。

「沖縄の主権帰属は未確定」。「中国」側はそう嘯(うそぶ)き、暗に沖縄に対する領有権主張の橋頭堡(きょうとうほ)としての「理論」を構築しようとしている様ですが、ここでも最も肝心な視点が欠如しています。それは沖縄県民の「民意」です。確かに沖縄は嘗(かつ)て「琉球」と言う独立した王国でした。その琉球王国を慶長14(1609)年、薩摩藩が属国化(島津支配)し、明治11(1879)年、明治新政府が当時の「琉球藩」を廃止し、「沖縄県」を設置した事で、日本への帰属が完了した歴史的経緯から、沖縄県民(うちなんちゅ)の中に、少なからぬ「ヤマト」(本土)に対する反感や不信感がある事は、私も充分承知しています。然し、大東亜戦争(太平洋戦争)の際、日本本土で唯一、米軍との地上戦を経験、その後、「内地」とは異なり、米国の施政下に置かれた沖縄が、住民の強い希望で、昭和47(1972)年5月15日、「祖国復帰」(日本国への復帰)を果たした。これも又、事実であり、沖縄県民の「民意」によって実現した日本への復帰=帰属に対して、「中国」が「沖縄の主権帰属は未確定」と主張する行為は、沖縄県民に対する侮辱であり、沖縄県民の「民意」を踏み躙(にじ)る行為以外の何ものでもありません。この様な事で「中国」は、沖縄の「(中華大家庭への)祖国復帰」が本当に出来るとでも思っているのでしょうか? それ共、台湾同様、「武力解放」に訴える積もりなのでしょうか?

後に、平成17年3月17日に配信された、とあるニュースを皆さんに紹介したいと思います。

下地島空港への自衛隊誘致決議 沖縄、伊良部町議会

 沖縄県伊良部町議会は(2005年3月)16日、小泉純一郎首相らに対し、同町内の下地島空港などに自衛隊の部隊の誘致を要請する決議を可決した。米軍再編協議で米軍と自衛隊による同空港の共同使用案を米側が提示。防衛庁も南西諸島の防衛強化を目指しており、今後の国の動きが注目される。

 伊良部町は15日に沖縄県平良市など四市町村と、10月1日から「宮古島市」となる合併協定書に調印したばかり。決議は伊良部町などでの各種振興策も求めている。同調単独での存続を目指す動きもあり、18日に予定される各市町村議会での合併決議にみ影響を与えそうだ。

 「尖閣諸島の領有権問題など身近に脅威を抱えている状況で、下地島空港の活用が必要」などとする誘致決議は一部の議員が緊急動議で提案、賛成9、反対8で可決された。「駐屯する自衛隊は陸海空の戦闘力を保持する」ことも求めた。

 下地島空港は、沖縄県管理の第三種空港で、3000mの滑走路を持つ民間ジェット機訓練用飛行場。

 県と国は、同空港を民間利用に限る内容の確認書を交わした経緯があるが、米軍はフィリピンでの合同軍事演習や、スマトラ沖地震の人道支援で、日米地位協定に基づき給油作業を行っている。

(『山梨日日新聞』 2005年3月17日付記事より)

下地島空港 れは、台湾や尖閣諸島にほど近い「国境の島」(と呼んでも良いでしょう)に於いて、この春、可決された決議を伝えるニュースですが、文中には、「尖閣諸島の領有権問題など身近に脅威を抱えている状況」とあり、「中国の脅威」に対する警戒感を露(あら)わにしています。その上で、下地島空港(右写真)に「国境警備兵力」の配備を要求している訳です。この「決議」については、その後、収束しており、現時点での下地島空港への早急な自衛隊部隊配備は実現してはいません。然し、裏を返せば、この伊良部町議会(伊良部町は宮古諸島の内、伊良部・下地の二島からなっている)での「決議」は「民意」であり、「沖縄の主権帰属は未確定」と主張する「中国」側に対する、一方の当事者としての「回答」と捉える事も出来ます。もしも、「中国」が台湾同様、沖縄に対しても自国への復帰を求めるのならば、「武力」に頼るのでは無く、沖縄県民自ら「復帰」したいと願う様な、その気にさせる程の魅力 ── 古代支那の言に従えば「徳」を以(もっ)てすべきです。尤(もっと)も、

銃口から政権が生まれた国

「中国」=「中華人民共和国」に対して、それ(徳)を求める事自体、端(はな)から無理な話なのですが・・・(苦笑)

   余談(つれづれ)

「中国」側が日本の国家主権と沖縄県民の民意を無視して、公然と「沖縄の主権帰属は未確定」と主張し、故に「中国の潜在的領土」である等と言ったスタンスを取るのであれば、日本も「中国」に対して、「解放」の名の下(もと)に侵略併合したチベット(西蔵自治区及び青海・四川・貴州省の一部)・東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)・南モンゴル(内蒙古自治区)、そして、満洲(遼寧・吉林・黒竜江省)と言った地域の「主権帰属は未確定」と主張、当地の分離独立運動を支援すれば良い。もしも、「中国」が「我国に対する重大な内政干渉である」と主張してきたら、逆に「抑(そもそ)も先に内政干渉してきたのは、日中(日支)(いず)れの方からか?」と反論してやれば良い。現在の日中関係は善隣友好共存とは程遠い、対立競争の時代にあります。文字通り、「食うか、食われるか」、「やるか、やられるか」と言った状況にあります。日本が今後も、東アジアの平和安定を維持したいのであれば、覇権主義を強めている「中国」を制する為にも、より一層の国力強化=「富国強兵」に努めると同時に、たとえ相手の態度が硬化しよう共、「言うべき事はしっかり言う」、そう言った外交姿勢で臨まねばならない、と私は強く思います。


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