Reconsideration of the History
71.「伝統の国」日本・「断絶の国」コリア(2000.6.7)

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2001年のFISワールドカップ(サッカー)日韓共同開催の決定や、韓国における「日本文化」の解禁等、この所、日韓の話題は事欠きません。国が同じ東アジアに位置し、顔形も似ている等、共通の点も多々見受けられますが、逆に隣同士である日韓両国程、文化・価値観・思想観が異なるのも珍しいと言えます。さて、よく「韓国(コリア)は、いずれ日本に追いつき追い越す」と言う意見が出ますが、私には些(いささ)か無理がある様に思えるのです。それは、一体なぜなのか? 今回は、この事について書いてみたいと思います。

ず第一に、政治面での「断絶」が挙げられます。韓国の歴代政権を見れば一目瞭然ですが、基本的に新政権が前政権を「否定」する慣例があります。金泳三(キム・ヨンサム)政権時代における全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領・盧泰愚(ノ・テウ)前大統領の訴追、盧泰愚政権時代における全斗煥前大統領への追求等々。又、更に遡ると、高麗から李朝と言った王朝交替にも同様な事例が見受けられました。そして、王朝なり政権の交替によって、前代の進めた政策が180度転換される事がざらだった訳で、つまりは、前代から次代への「継承」よりも、次代が前代を切り捨てる「断絶」が主流だった訳です。

二に、文化面での「断絶」が挙げられます。例えば、コリアを代表する陶磁器として、青磁と白磁があります。青磁は高麗時代(918-1392)に、白磁は李朝時代(1392-1910)にそれぞれ作られたものです。この内、青磁は製造技術が日本に伝来後、発展昇華し、肥前(現・佐賀県及び長崎県の一部)の有田焼や、鍋島焼・九谷焼等、様々な名品を産み出しました。これに対してコリアはどうかと言うと、現在のコリアに高麗時代の青磁を製造する技術はありません。なぜか? 高麗から李朝への王朝交替の課程で、陶芸集団が高麗伝統の青磁の製造技術継承を放棄し、李朝の白磁一辺倒になってしまったからです。つまり、コリアでは青磁の製造技術が「断絶」し、もう青磁を作りたくても、作る職人がいない ── 作れないと言う訳です。

三に、コリアの国民性が挙げられます。例えば、日本では和菓子店等で、「天保○年創業」とか、「主人が○代目」等と言う老舗が結構あります。他にも、陶芸・刀匠・歌舞伎等、様々な分野で「技の継承」がなされています。そして、日本社会では、そう言った「伝統の技」を継承する店や職人に対して、一目置くと共に、非常な敬意を払います。では、コリアではどうか? コリア社会では、そもそも「職人」と言う身分を蔑(さげす)み嫌います。例えば、自分が菓子店の主人だとしても、決して自分の子供に生業を継がせようとは思わず、官僚なりビジネスマンと言った「ホワイトカラー」の職種に就かせようとします。又、菓子店が儲かりある程度の資産が出来ると、永年営んできた菓子店をさっさと閉め、自分で会社を興し、自らは社長として「左団扇」(ひだりうちわ)な生活を送ろうと考えます。これは、多分に「両班」(ヤンバン:王朝時代の貴族階級)への憧憬が作用しているのでしょうが、これでは、「技の継承」がなされないのも当然です。

かに日韓は、似た顔形・支那文化の受容者と言った共通点があります。しかし、その根幹は「似て非なる国」と言うのが現実です。外国の文化・技術を積極的に吸収し、発展昇華させる「伝統の国」日本。従来の「日本文化禁止」政策や、伝統技術継承軽視の例に代表される「断絶の国」コリアコリアが日本に追いつき追い越す為には、先ず、コリアに根付く「断絶」と言う伝統と訣別する必要があるのではないでしょうか。


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