Reconsideration of the History
154.皇位継承は長子優先? 「有識者会議」の方針に異議あり!!(2005.10.15)

前のページ 次のページ


皇位継承は長子優先
典範改正へ有識者会議が方針 女性、女系天皇を容認

 小泉純一郎首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」(座長・吉川弘之元東大学長)は(2005年10月)8日、安定的な皇位継承を維持するため継承順位を天皇の長子(第一子)からとし、女性、女系天皇を容認する方針を固め、最終調整に入った。政府は同会議が11月中にもまとめる報告書に基づき、皇室典範改正案を次期通常国会に提出、成立を目指す考えだ。歴史上、持統天皇など十代八人の女性天皇が存在したが、皇位は父方に天皇を持つ男系の世襲が続いてきた。明治以降は皇室典範で「男系男子」に限定しており、今回の見直しで伝統的な皇位継承制度が大きく変ぼうする見通しだ。

 会議は25日の会合から詰めの協議に入り、皇位継承資格、順位、皇族の範囲について各委員の意見を集約する。報告書では、男系維持が困難な理由など主な論点への評価も加える。

 会議はこれまで公式、非公式の会合を重ね、男性皇族が40年近く誕生していない現状を踏まえ、男系男子の継承を維持する現行制度では「近い将来に継承者がいなくなり、皇室制度を維持できなくなる」との認識で一致。男系維持のために旧皇族の復活や皇室に養子を迎える案も検討したが「60年近く前に皇室を離れた人が皇族に復帰したり、制度として養子を採用するのは時代にそぐわない」などの理由で見送った。

 継承順位の検討では、長子を優先するか、直系の兄弟姉妹間で男子を優先するかが最大の焦点となったが、長子優先は @皇位継承者が早期に決まり制度が安定する A分かりやすく、国民に広く受け入れられる── などと評価、支持する意見が大半を占めた。

 男子優先には「男子で皇位が継承されてきた歴史に配慮することができる」との意見があったが、長子が女子で弟(第二子)が生まれるケースも想定され @皇位継承者の確定が遅れる A女性天皇が中継ぎ的な存在に扱われてしまう── などの反対意見が挙がった。

 皇族の範囲については、天皇や皇族の家族として生まれた者の子孫は何世代後でも皇族として残る現行の「永世皇族制」を踏襲する。女性皇族も宮家を創設することになり、皇族の人数が増加する課題は残る。

(『山梨日日新聞』平成17年10月9日付記事より)

年(平成17年)1月25日の初会合を皮切りに、幾度と無く会合が持たれてきた小泉総理の私的諮問機関「皇室典範(てんぱん)に関する有識者会議」(以下、「有識者会議」と略)。発足当初から、「女帝(女性天皇)ありき」と指弾されてきた有識者会議が明らかにした方針は、矢張り当初から噂されていた通りのものでした。(上記新聞記事参照) これに対して、小堀桂一郎・東大名誉教授、小田村四郎・前拓殖大総長、八木秀次・高崎経済大助教授等の学者が早速猛反発した事は既にご存じの方もおられる事と思います。(下記Webニュース参照)

皇室典範有識者会議に学者らが反発 緊急声明を発表

 小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」(吉川弘之座長)の議論が女性・女系天皇を容認する方向で進んでいることに反発する学者らが6日記者会見し、敗戦直後に皇籍離脱した旧皇族の復帰によって男系継承を守るよう求める「緊急声明」を発表した。

 会見したのは小堀桂一郎・東大名誉教授、小田村四郎・前拓殖大総長、八木秀次・高崎経済大助教授ら。声明は、男系男子による皇位継承を「有史以来の不動の伝統」と強調。「有識者会議が旧皇族の復籍案について十分に検討することなく『国民の理解が得られにくい』などの判断のもとに排除することは暴挙というほかない」としている。

 また、有識者会議の吉川座長が会見で、「皇族の意向を聴いたり国民の意見を改めて聴く考えはない」と語ったことや、政府関係者が「政治家に介入させない」などと述べたと伝えられていることについて「このような傲慢(ごうまん)不遜(ふそん)な姿勢は速やかに正されなければならない」と批判した。

 小堀氏らは、「男系継承という至高の皇室伝統の大転換が安易に行われようとしていることは黙過できない」として「皇室典範問題研究会」を結成し、各方面に働きかけていくとしている。

(『asahi.com』 2005年10月7日 (金) 03:03 より)
配信元URL:http://news.goo.ne.jp/news/asahi/shakai/20051007/K2005100603270.html?C=S

自身も、小堀桂一郎・東大名誉教授、小田村四郎・前拓殖大総長、八木秀次・高崎経済大助教授等の学者諸氏と同意見です。有識者会議が「60年近く前に皇室を離れた人」(敗戦直後に皇籍離脱した旧皇族)と称した旧十一宮家・51人の「旧皇族」は、今年2月に発表したコラム『140.昭和22年の「皇籍剥奪」を撤回せよ!! ── 「皇統断絶」危機に対する処方箋(下)』に於いても触れた通り、自らの意志にしたがい進んで「皇籍離脱」したのでは無く、逆に自らの意志に反して無理矢理「皇籍剥奪」=臣籍降下(皇族から一般庶民に)させられた訳で、有識者会議の言は旧皇族に対して、喩(たと)えれば「泣きっ面(つら)に蜂」よろしく極めて傲慢不遜な物言いである訳です。「皇籍剥奪」された旧皇族の多くは鬼籍にある訳ですが、旧十一宮家の内、今現在も存続している七家中、久邇(くに)・賀陽(かや)・竹田・朝香・東久邇の五家には男性が居(お)ります。彼ら旧皇族全てに皇籍復帰を求める事は困難かも知れませんが、理解を得られる方々には復帰して頂く、「女帝ありき」の結論を軽々(けいけい)に出す前に、先(ま)ず、その努力をするべきですし、その選択肢を端(はな)から除外すると言うのは、はっきり言って有識者会議の怠慢であり、方針誘導以外の何ものでも無い、と私は思う訳です。更に言えば、皇位継承の歴史に於いて、皇族だった者が一旦臣籍降下した後(のち)、再び皇籍復帰し即位した「宇多(うだ)天皇」と言うれっきとし先例があるのです。過去の推古・持統と言った十代八人の女帝の先例を持ち出し、女帝容認で議論を集約する手法を採るのであれば、「宇多天皇」の先例を持ち出し、旧皇族の皇籍復帰・皇位継承資格付与を容認する事も又、「是」では無いでしょうか?

(さて)、次の問題に話を移します。有識者会議は、皇位継承順位について「長子優先」── 詰まり、男女の別に関係無く「第一子」にすきべである、との方向で意見集約を図っている様ですが、これとても到底同意出来るものではありません。抑(そもそ)も、『皇室典範』改正の目的は、昭和40(1965)年の秋篠宮文仁親王殿下御降誕以来、実に40年もの間、皇室に「男子」が誕生しておらず、このままでは現『皇室典範』に遵(したが)う限り、早晩、皇位継承有資格者不在 ── 「皇統断絶」と言う事態に陥ると見たからでしょう。だからこそ、「男系男子」不在となった場合を想定して、「男系女子」(愛子内親王殿下はこれに当たる)、或(ある)いは範囲を更に拡大して、「女系男子」や「女系女子」(紀宮清子内親王殿下と黒田慶樹さんの間にお子様が誕生した場合は、これに当たる)にも皇位継承資格を付与しようと考えた訳でしょう。又、日本の皇位継承が「男系男子」の伝統に則(のっと)って行われてきた「歴史」を鑑(かんが)みれば、「優先順位」はあくまでも「男系→女系」、「男子→女子」であるべきです。

  1. 男系男子
  2. 男系女子
  3. 女系男子
  4. 女系女子

それを、「男女の別に関係無く「第一子」にすきべである」との方向で意見集約を図っている有識者会議等、以(もっ)ての外(ほか)です。

に「長子優先」については、まだまだ指摘すべき点があります。有識者会議は継承順位の検討に於いて、「長子優先」か、直系の兄弟姉妹間で「男子優先」かについて、「皇位継承者が早期に決まり制度が安定する」、「分かり易く、国民に広く受け入れられる」と言った理由で、「長子優先」を大半のメンバーが支持している様ですが、これとて以ての外です。例えば、一般の家庭に於いて待望の赤ちゃん(第一子)が誕生 ── 然(しか)も「女子」だったとします。少子化のご時世とは言え、大抵の親は「二人目」、然も「男子」を望みます。「二人目」に恵まれず、子供が「女子」のみだった場合には、止(や)むを得ず、婿(むこ)養子を取って家督を継がせるか、若(も)しくは、諦(あきら)めて嫁(とつ)がせるか(家は自分の代で断絶)と言う事になりますが、経済的その他諸々の理由で二人目を作らないと最初から決めている夫婦ならいざ知らず、大抵は二人目=「男子」の誕生を望みます。そして、この段階で既に「跡継ぎ」を決定しているでしょうか? 弟(第二子であり男子)が産まれれば、例え、姉(第一子であり女子)がいたとしても、弟を跡継ぎにするのが一般的でしょう。「跡継ぎ」とは皇室で言えば、「皇位継承者」の事です。誕生と同時に「第一子」を皇太子に決定する事は、確かに分かり易い事ではあります。然し、世間一般でさえ、跡継ぎ決定を留保し、第二子以降の誕生に迄持ち越す事がざらである以上、「皇位継承者が早期に決まり制度が安定する」とか「分かり易く、国民に広く受け入れられる」と言った主張は、必ずしも当を得たものでは無い訳です。安直に男女の区別無く「第一子」を「皇太子」に決定するよりも、「第二子」以降の誕生をも考慮に入れた暫定流動的(勿論、『皇室典範』のルールに遵った上での事)な皇位継承(順位)であっても、決しておかしくは無い筈です。そして、それが「男系男子」による皇位継承の伝統を維持してきた皇室にとっての「次善の策」であり、その「次善の策」(直系の兄弟姉妹間に於ける「男子優先」)を飛び越して、いきなり、男女の別に関係無く「第一子」と言うのは、「ジェンダーフリー」か、はたまた過剰な「男女平等」観念に毒され、皇室の伝統を全く無視した、正に皇統の「破壊」以外の何ものでも無いと言えるでしょう。

後に、皇族の「範囲」についても触れておかねばなりません。今回、有識者会議は『皇室典範』改正に際して、現行では結婚と同時に皇籍離脱せねばならない内親王・女王(女性皇族)の処遇について、結婚後も皇籍に留まり、「宮家」(親王家)の創設も認めるとしています。そして、更に「天皇や皇族の家族として生まれた者の子孫は何世代後でも皇族として残る」 ── 詰まり、当人の意志に関係無く皇籍離脱は認めない共しています。確かに少子化の波は皇室もご多分に漏れない訳で、皇統存続の為には範囲を広げておく必要がある事は充分理解出来ます。然し、だからと言って闇雲に鼠算(ねずみざん)式に皇族が「増殖」する様な事態は、諸般の事情から避けねばならないでしょう。その観点から、宮家創設から数世代後には、一定の条件を満たしている事を理由に、継承者以外は皇籍離脱も可能とする、又、逆に継承者に恵まれない宮家が皇室本家(内廷皇族)や他宮家(外廷皇族)から養子を迎えられる、そう言った柔軟なシステムにしておくべきでは無いでしょうか? 何(いず)れにせよ、有識者会議は、皇室が継承してきた「男系男子」による皇位継承の伝統を軽々に扱う事無く、伝統に最も近い「次善の策」としての『皇室典範』を模索すべきですし、その為には、メンバー一人々々がもっと皇室と皇位継承の「歴史」について、より深く勉強すべきと言えます。


前のページ 次のページ