Reconsideration of the History
231.ロシアには気を付けろ! ── 北方領土は日本にとっての鬼門である!! (2010.12.21)

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回の小論(『230.領土問題でロシアが居直るなら、日本も手段を選ばず対抗せよ!!』)に於いて、私は明らかに前時代に回帰しつつあるロシア(以下、「露国」と略)に付いて指摘し、日本が本気で北方領土を取り戻そうとするならば、「謀略」と言う禁じ手も含め手段を選ぶなと論じました。然(しか)し、それは同時に日露両国の軋轢(あつれき)と緊張が拡大し、対立が激化すると言う事でもあります。実際、平成21(2009)年10月17日に前原誠司(まえはら-せいじ)国土交通相兼沖縄及び北方対策・防災担当相(当時)が語った発言

「(北方領土は露国による)不法占拠だ。その事は言い続けていかなければならない。四島の返還を求めていく。日本国民として望郷の念を新たにした。昨日、今日と伺った(元島民等)皆さんの声を内閣に伝え、悲願達成の為、努力したい」

は、前原氏を外相に任じた現在の菅政権に於いても尾を引いており、露国を苛立(いらだた)たせている事は明らかです。ですが、抑(そもそ)も、種を蒔(ま)いたのは日本では無く、露国である事を我々は再認識せねばなりません。「盗まれた」側が、「盗んだ」側に遠慮して一体何になるのか? 正論を胸を張って言う事で露国が態度を硬化させるからと言って、言う可(べ)き事を言わないと言った姿勢は如何(いかが)なものか? 大義が我(日本)にある以上、決して日本側から一歩も譲歩する必要等無いのです。

も、私は戦後の歴代政権が御題目の様に唱えてきた「北方領土問題を解決した上での日露(日ソ)間の平和条約締結」と言う姿勢自体に異を唱えざるを得ません。果たして本当に「平和条約」を締結せねばならないのか? 現在、日露間には両国締結による平和条約は存在しませんが、相互に大使館を設置し曲がりなりにも外交関係は機能しています。それとは反対に、一度は『日華平和条約』を締結したにも関わらず、所謂(いわゆる)「日中国交回復」により条約が失効、外交関係も断絶してしまった台湾との関係の方が、余程(よほど)問題であると考えています。まあ、今回は日露間の問題がテーマですので、台湾の話はこれ以上しませんが、日露間に平和条約が締結されていない現状で何か不都合があるのか? 是が非でも平和条約を締結せねばならない必要性があるのか? 唯(ただ)単に「〜せねばならない」と言う強迫観念だけで平和条約に固執しているのであるならば、日本として、その様な考えをあっさりと捨て去る可(べ)きです。現状では、日露間に平和条約等全く必要ありませんし、条約締結の為に北方領土を山車(だし)にする等以(もっ)ての外(ほか)、正に言語道断(ごんごどうだん)と言えるでしょう。

(さて)、今年(平成22年=2010年)9月に起きた尖閣諸島沖漁船衝突事件により、日本と「中国」(支那)との関係が急速に悪化した事は、内閣府が10月に行った世論調査に於いて、「中国」に「親しみを感じない」との回答が8割近くに上(のぼ)った事でも明らかです。読者諸氏に於かれても、その様に感じて居(お)られる方が少なくないのでは無いかと推察します。そして、この事は日本の防衛政策にも影響を及ぼし、急速に空母(航空母艦)部隊建設をも含む海軍力の増強に邁進(まいしん)する「中国」の軍事的脅威から、彼らが一方的に領有権を主張する尖閣群島や与那国島(よなぐにじま)・石垣島からなる八重山(やえやま)列島、宮古島(みやこじま)・下地島(しもぢじま)からなる宮古列島と言った先島(さきしま)諸島を如何(どう)守るか? 万が一、「中国」軍が侵攻してきた際、どの様に対処するのか? それに応(こた)える為、従来の「基盤的防衛力」から「動的防衛力」にシフトする事を謳(うた)った新防衛計画大綱及び中期防衛力整備計画(中期防)が策定された事でも明らかです。従来、なおざりにされてきた南西諸島(鹿児島県管轄の薩南諸島及び沖縄県管轄の琉球諸島)の防衛、その中でも日本最西端、尖閣群島を含む「国境地帯」先島諸島の離島防衛に日本が本腰を入れようと、漸(ようや)く重い腰を上げた事には大賛成です。然(しか)し、その為に「北の備え」を疎(おろそ)かにする様な事があるのだとすれば、それは大いに問題であると言わざるを得ません。

「東西冷戦は既に過去のものだ」と言った声をよく聞きますが、果たして本当にそうなのでしょうか? 私は大いに疑問です。確かに、米国を盟主とする西側自由主義陣営と、ソ連を盟主とする東側共産主義陣営に世界が二分された「世界規模での東西冷戦」は、旧ソ連の解体とその衛星国であった東欧諸国の民主化により終焉(しゅうえん)しました。然し、それは飽(あ)く迄(まで)も「世界規模での東西冷戦の終焉」であり、狭く見れば「欧米諸国に於ける東西冷戦の終焉」でしかありません。実際、日本が位置する極東地域を見渡せば、中国共産党治下の「中国」、朝鮮労働党治下の北鮮(北朝鮮)と言う一党独裁政権による非民主専制国家が厳然として存在し、日本は領土問題や歴史問題で周辺諸国との間に対立・緊張状態を依然抱えた儘(まま)です。詰まり、殊(こと)極東地域に限って言えば、依然として「冷戦真っ只中(まっただなか)」であると言わざるを得ません。然(しか)も、冷戦時代、日本にとって最大の仮想敵国であったソ連は解体したものの、その後継国家である露国は現在も、日本にとっての有力な仮想敵国の一つであり続けているのです。

日本の領空を侵犯した露軍戦略爆撃機 Tu-95RTs
東西冷戦時代、旧ソ連は戦略爆撃機 Tu95(西側暗号名「ベア(熊)」)を使って「東京急行」と呼ばれる飛行ルートで繰り返し日本の領空を侵犯していた。そして、現在。世界規模での東西冷戦が終焉(しゅうえん)し、ソ連がロシア連邦と名を変えたにも関わらず、近年、露軍は「東京急行」を再開。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進を行う回数も増加の一途を辿(たど)っている。
陸上自衛隊第七師団
北海道千歳市の東千歳駐屯地に師団司令部を置く陸上自衛隊第七師団。東西冷戦時代、ソ連軍による北海道侵攻の備えとして編成配備された陸上自衛隊唯一の機甲師団で、現在も陸自最強の部隊。この「北の守護神」を「中国」からの脅威に対応する為の南西諸島防衛シフトに振り向ける事等、決してあってはならない。
軍事演習「ヴァストーク(東方)2010」に於ける揚陸作戦演習の模様
軍事演習「ヴァストーク(東方)2010」に於ける揚陸中の特殊装甲車
軍事演習「ヴァストーク(東方)2010」に於いて進軍する特殊装甲車
平成22(2010)年6月29日から7月8日迄、シベリア軍管区及び極東軍管区の大兵力を動員して行われたロシア軍事演習「ヴァストーク(東方)2010」。日本固有の領土であり乍(なが)ら、旧ソ連及び後継国家であるロシアにより不法占拠され続けている北方四島の内、最大の島、択捉島(えとろふとう)のオクチャブリスキー(十月革命)演習場に於いても、兵士1500人、軍用特殊車両200輛を投入した殲滅(せんめつ)戦演習が行われた。上の写真は揚陸作戦演習の模様を写したものだが、これは先の大戦に於いて、千島列島・南樺太(からふと)に侵攻した旧ソ連軍の「前科」を考えれば、日露関係が重大な局面を迎えた際、露軍の北海道への揚陸侵攻作戦にも充分応用可能な実戦演習なのである。
露海軍太平洋艦隊ミサイル巡洋艦「ヴァリャーク」
露海軍北方艦隊重原子力ミサイル巡洋艦「ピョートル-ヴェリーキイ(大帝)」
露海軍黒海艦隊ミサイル巡洋艦「モスクヴァー」
ロシア軍事演習「ヴァストーク2010」は陸上に留まらない。海上演習では、太平洋艦隊のスラーヴァ級ミサイル巡洋艦「ヴァリャーク」(写真上)、北方艦隊のキーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦「ピョートル-ヴェリーキイ(大帝)」(写真中)、黒海艦隊のスラーヴァ級ミサイル巡洋艦「モスクヴァー」(写真下)のロシア海軍三大主力艦隊の旗艦を含む30隻もの艦艇を日本海に集結。ロシアは北方領土問題で対立する日本を軍事面で威圧牽制する姿勢を見せ付けた。
フランスのミストラル級指揮・戦力投入艦(強襲揚陸艦)
平成21(2009)年9月、ロシアのポポフキン国防次官(装備担当・上級大将)が出演したラジオ番組の中で、フランスからミストラル級指揮・戦力投入艦(強襲揚陸艦)を購入すると発言。更に今年7月1日には、マカロフ参謀総長が購入予定の同艦に付いて、「クリール諸島(千島列島及び北方四島の露側呼称)では上陸部隊を急派する手段が必要だ」として、極東への配備迄表明している。識者の中には、実際にはジョージア(グルジア)やバルト三国等の反露国家に対する軍事介入用としての購入を擬装する為の発言と見る向きもある。だが、「ヴァストーク2010」の狙いを「極東国境に於ける安全を保障し、“仮想敵”から国益を守る事」と説明し、日本の目と鼻の先で大規模な軍事演習を行ったロシアに対し、日本が「よもやロシアが日本に攻めて来る事等あるまい」と楽観主義でいる事は非常に危険だ。何故なら、相手は『日ソ中立条約』を有効期限内に一方的に破棄して対日参戦、千島・南樺太を侵略占領したソ連の後継国家なのだから。
海上自衛隊おおすみ級輸送艦
対する我が海上自衛隊が現在保有する「揚陸艦」は、広島県呉(くれ)基地を母港とする満載排水量14,000tのおおすみ級輸送艦3隻。満載排水量21,500tのミストラル級強襲揚陸艦に比べると、大きさ・搭載能力に於いて大きく水をあけられる。

ソ連時代、西側陣営に属した日本の防衛体制は北方からの脅威 ── 東側陣営の極東ソ連軍の南侵に如何(いか)にして対処するか? 突き詰めれば、この一点にありました。実際、旧ソ連軍は極東の軍事拠点都市ヴラヂヴァストーク(浦塩斯徳,ウラジオストク:その意味する所は「東方を征服せよ」)近郊の空軍基地から発進させた戦略爆撃機(戦爆)Tu95(トゥポレフ95)や偵察機を、樺太(からふと)南方、千島列島、北海道東岸、本州太平洋岸と南下させ、伊豆諸島付近で反転、帰投するルート ── 所謂(いわゆる)「東京急行」(断っておくが、決して首都圏の私鉄「東京急行電鉄」、略して「東急」の事では無い)による威力偵察行動を繰り返しました。そして、その際、度々(たびたび)、日本の防空識別圏(ADIZ)や領空に侵入。航空自衛隊(空自)や在日米空軍の戦闘機が緊急(スクランブル)発進したものです。扨(さて)、この「東京急行」。ソ連解体による東西冷戦終焉により無くなったと思われている方が居(お)られたなら、その認識を改めて頂きたいと思います。実はソ連が解体して久しい現在も行われている。いや、よりはっきりと言えば、再び活発化しているのです。例えば、皆さんの記憶に新しいものでは、平成20(2008)年2月9日の「東京急行」。この日の午前7時30分36秒から同7時33分24秒迄の2分48秒間、露軍のTu95戦爆が東京の南方約500Kmの伊豆諸島南部、嬬婦岩(そうふがん)上空の日本領空を侵犯。空自は北海道の千歳(ちとせ)、青森県の三沢、茨城県の百里の各基地からF15戦闘機等22機と、静岡県の浜松基地から空中警戒管制機(AWACS:エーワックス)、三沢基地からE2C早期警戒機を各1機緊急発進させました。そして、英語・露語双方で「領空に接近している」と通告、更に領空侵犯中には「領空侵犯しているので退去せよ」と警告を発しました。然し、露軍機はこちらからの無線は無視、一切応答する事無く悠然と帰投していったのです。(日露逆の立場だったなら、間違い無く空自機は露軍機によって撃墜されていた事だろう) 詰まり、ソ連が解体し、東西冷戦が終焉したとは言うものの、これが日露間の軍事的現実なのです。それにも関わらず、日本の防衛政策は「中国」にばかり視線(め)が行き、あろう事か防衛省は来春、九州・沖縄地域で行う実動演習に、北海道千歳市の東千歳駐屯地に師団司令部を置く陸上自衛隊(陸自)第七師団を派遣すると言うのです。因(ちな)みに、第七師団は、機甲科(戦車)・普通科(歩兵)・飛行隊等から構成される陸自唯一の機甲師団で、冷戦時代には北の最前線で対ソ防衛を担ってきた陸自最強の部隊。例えれば、旧帝国陸軍に於ける最強の陸上兵力であった「関東軍」に相当する正(まさ)に「現代の関東軍」共言えるその師団の存在価値がソ連解体で失われたと考えられているのだとすれば、それは正(まさ)に由々(ゆゆ)しき事態と言わざるを得ませんし、本州以北の部隊を九州・沖縄地域にシフトする戦略の中で、北海道の兵力を削減して南西諸島防衛に充(あ)てるのだとすれば、正直、血迷ったとしか言いようがありません。それが私の実感なのです。そして、それを象徴する様な出来事が今夏、実際に起きているのです。

成22年6月29日から7月8日迄の10日間、露国極東地域に於いて、露軍による今年最大規模の軍事演習が行われました。その名を「ヴァストーク(東方)2010」と言います。陸海空軍等から最大約2万人の兵員と地上兵器2万5千点、航空機70機、そして、太平洋艦隊旗艦「ヴァリャーク」・北方艦隊旗艦「ピョートル-ヴェリーキイ(大帝)」・黒海艦隊旗艦「モスクヴァー」を含む艦艇30隻(正に露海軍主力艦隊の揃い踏みと言った所)を動員しての大演習に付いて、ニコライ-エゴーロヴイチ-マカロフ露連邦軍参謀総長(上級大将)は国営イタル-タス通信を通じて、「極東国境に於ける安全を保障し、“仮想敵”から国益を守る事」と説明しましたが、此処(ここ)に言う「仮想敵」とは一体何を指すのか? 一説には近年、急速な軍拡で極東露軍にとっても脅威を増している「中国」に対する牽制・示威行動であると言う見方もありますが、それ以上に、矢張り日本を念頭に置いてのものだったと私は見ています。その理由の一つは、今回の演習で、日本固有の領土であり乍(なが)ら、未(いま)だ露国が不法占拠を続けている北方四島の内、最大の島、択捉島(えとろふとう)のオクチャブリスキー(十月革命)演習場に於いて、揚陸作戦及び殲滅(せんめつ)戦演習が行われた事です。行われた場所は日露間の領土問題の対象地域。幾ら軍拡に邁進(まいしん)する「中国」とて、尖閣群島への急襲上陸占領ならいざ知らず、遠く離れた、ましてや露国が押さえている北方四島を侵略する等と言う事は、現状に於いて万に一つも考えられない事です。となれば、必然的に領土問題で係争している日本を念頭に置いての演習だったと考えるのが妥当な所です。然し、それでもまだ疑問が残ります。戦後、営々と「専守防衛」の名の下(もと)に、日本の自衛隊が「相手から撃ってくる迄反撃すら出来ない」(撃てない)事を充分承知している筈(はず)の露国が、本気で日本の自衛隊が北方四島を武力で奪還しに来る等と考えているのか? 実はそれ以上に恐ろしい可能性があるのです。

成21(2009)年9月、ウラジーミル-アレクサンドロヴィチ-ポポフキン露国防次官(装備担当・上級大将)が出演した自国ラジオ番組の中で、フランスからミストラル級指揮・戦力投入艦(以下、「強襲揚陸艦」と略)を1隻購入すると同時に、露国内に於いても同型艦を4隻建造する予定である事を明らかにしました。そして、この艦の購入目的に付いて、マカロフ参謀総長が「クリール諸島(千島列島及び北方四島の露側呼称)では上陸部隊を急派する手段が必要だ」と補足すると同時に、極東地域への配備迄表明したのです。ミストラル級強襲揚陸艦は全長 199m・基準排水量 16,500t(満載時 21,500t)で、全長 178m・基準排水量 8,900t(満載時 14,000t)の海上自衛隊おおすみ級輸送艦(ドック揚陸艦)よりも大型。然(しか)も搭載能力は、おおすみ級が、LCAC(エルキャック;エアクッション揚陸艇)2隻・90式戦車10輛(又は74式戦車12輛)・人員普通科3個中隊330人であるのに対し、ミストラル級強襲揚陸艦は、LCAC 2隻(又は小型揚陸艇4隻)・ヘリコプター16〜35機・ルクレール戦車13輛又は装甲戦闘車両60輛(航空機非搭載で最大230輛の車両を搭載可能)・人員1個大隊450人(短期間ならば900人)と、おおすみ級を凌駕(りょうが)。この様な強襲揚陸艦を5隻、極東地域に配備すると言う事は、単純に考えて有事の際、5隻全艦を出動させれば、最大で5個大隊2,250人の兵士と1,150輛の軍用車両を「何処(どこ)か」へ揚陸可能だと言う事です。そして、其処(そこ)へ持ってきて、今夏行われた択捉島での揚陸作戦及び殲滅戦演習。66年前(昭和20=1945年8月8日)『日ソ中立条約』の有効期限内に於ける一方的破棄及び対日参戦、更には日本が合法的に取得領有していた南樺太・千島全島に対する侵攻占領と言う「前科」を考える時、プーチン政権以降の「大国志向」露国が、北方領土問題で対立の溝を深める日本に対し、一体、何を仕掛けてくるか分からないのです。

十二支方位対応図
日本では、方位を表すのに一般的な東西南北の組み合わせとは別に、十干(じゅっかん)・十二支・八卦(はっけ)を組み合わせたものが用いられ、「丑(うし)」(北東微北)と「寅(とら)」(北東微東)の間、北東を指す際、「艮(うしとら)」の方角と呼んだ。
京都御所の北東、猿が辻
日本では古くから、艮(うしとら)の方角を「鬼門」と呼び、忌(い)む可(べ)き方位としてきた。その名残(なごり)は「鬼門除(よ)け」の為に、わざわざ角を折り曲げた京都御所の北東、猿が辻(さるがつじ)の塀に今も見る事が出来る。

は変わりますが、日本では古くから、一般的な東・西・南・北の組み合わせとは別に、甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)の十干(じゅっかん)と、子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(ゐ)の十二支、そして、八卦(はっけ)の内、艮(ごん)・巽(そん)・坤(こん)・乾(けん)の四つを組み合わせて方位を表す方法が用いられてきました。その名残(なごり)として未(いま)だによく耳にするのが北東を表す「艮(うしとら)」や南西を表す「坤(ひつじさる)」です。これらの内、艮(北東)の方角は、陰陽道(おんみょうどう)が日常生活を律していた時代から、忌(い)む可(べ)き方位「鬼門(きもん)」と呼ばれ、屋敷の中心から見て鬼門の方角には「鬼門除(よ)け」の護符を貼ったり、「鬼門封じ」の仕掛けを施(ほどこ)したりして、「鬼門」から鬼が入ってこない様 ── 災難が降りかからない様にしてきました。(因みに「鬼門」は「表鬼門」共呼ばれ、正反対の坤(南西)は艮(北東)の「鬼門」に対し、「裏鬼門」と呼ばれる) 此処迄(ここまで)読まれて、何故、急にこの様な話をするのか訝(いぶか)しがられた方も居(お)ありの事でしょう。「何が如何(どう)関係するのか?」と。然し、今回の小論と関係が大ありなのです。

に掲げたのは東アジアの地図ですが、見てご覧の通り、日本列島は千島列島から北海道、本州、四国、九州、南西諸島、そして、台湾(旧日本領)と、北東から南西に国土が連なっているのがお分かりの事と思います。そして、内地(日本本土の旧称)から見て、北方四島を含む千島列島や北海道は北東 ── 詰まり艮の方角 ── 「鬼門」に当たり、尖閣群島を含む南西諸島や日本のシーレーン(海上交通路)の要衝である台湾は南西 ── 詰まり坤の方角 ── 「裏鬼門」に当たる訳です。

東亜地図
千島列島と南西諸島・台湾
北方四島を含む千島列島は、内地(日本本土)から見て艮(うしとら)の方角 ── 詰まり「鬼門」に当たる。一方、尖閣群島を含む南西諸島(薩南・琉球両諸島の総称)及び台湾は、同じく内地から見て坤(ひつじさる)の方角 ── 詰まり「裏鬼門」に当たる。

函館の夜景
「百万ドルの夜景」と称される夜の函館市街。この美しい北の大地は日本にとって、北方四島を含む千島列島と同様、「鬼門」の方角に位置する。66年前、「鬼」(旧ソ連)が千島・南樺太を侵略し奪った事を考えると、日本がしっかりと「鬼門封じ」(北への備え)を施しておかなければ、今度は北海道が「鬼」(露国)の魔手に落ちる事になりかねないのだ。

屋敷(いえやしき)に於いて、「鬼門」や「裏鬼門」の方角に「鬼門除け」や「鬼門封じ」を施す事は前述しましたが、それは国家とて同じ事だと私は考えています。ましてや、北方四島には露国、尖閣群島には「中国」と言う「鬼」(仮想敵国)が控えている以上、尖閣諸島沖漁船衝突事件の影響で「裏鬼門」にばかり目が行き、肝心の「鬼門」に対する備えを果たして怠(おこた)って良いものなのか?と危惧せざるを得ません。近年活発化している「東京急行」、「ヴァストーク2010」に於ける揚陸作戦及び殲滅戦演習、ミストラル級強襲揚陸艦の極東地域への配備計画と言った露国の動きを見ると、私は近い将来、露国が66年前と同様、再び日本に軍事侵攻して来るのでは無いか? そして、その時、最初の目標(ターゲット)となるのは、露国が占拠し続けている南樺太や北方四島の目と鼻の先にある島

北海道

では無いのか? だからこそ、陸自部隊による北方四島への上陸奪還作戦等考えられないにも関わらず、わざわざ揚陸作戦及び殲滅戦演習を行ったのでは無いか?(詰まり、これは北海道侵攻の予行演習?) そう思えて仕方無いのです。

岡本天明
岡本天明 (明治30/1897−昭和38/1963)
倉敷出身の画家にして神道家。幼少時より霊的能力があったと言われ、昭和19(1944)年、千葉県印旛(いんば)郡公津(こうづ)村(現成田市)の麻賀多(まがた)神社の末社、天之日津久(あめのひつく)神社に参拝した折を皮切りに、「国常立尊(くにとこたちのみこと)」が天明に度々(たびたび)自動書記させた一連の啓示書群は『日月神示(ひつくしんじ)』と呼ばれ、近未来の日本に付いて、北からの侵略を繰り返し警告している。而(しか)して、その正体とはロシアであり、核と弾道ミサイル開発で暴走する北鮮は単なる眷属(けんぞく;子分)でしか無いと言う。

後に、とある預言を引用して本小論を締め括(くく)りたいと思います。そして、それはこの様なものです。

「北から攻めて来る時が、この世の終わり初めなり」

「北から来るぞ。神は気も無い時から知らして置くから、よくこの神示
(しんじ)、心にしめて居(お)れよ」

「オロシア
(露国)に上がりて下がりた極悪(ごくあく)の悪神、いよいよ神の国(日本)に攻め寄せて来るぞ。北に気付けと、北がいよいよのキリキリざと申して、くどう気付けてありた事近付いたぞ」

これは、岡山県倉敷市出身の画家、岡本天明(てんめい)が、昭和19(1944)年、千葉県印旛(いんば)郡公津(こうづ)(現成田市)の麻賀多(まがた)神社境内(けいだい)の末社、天之日津久(あめのひつく)神社に参拝した折りを皮切りに、「国常立尊(くにとこたちのみこと)」なる神霊に憑依され「書かされた」自動書記啓示書『日月神示(ひつくしんじ)(又の名を『一二三(ひふみ)神示』共言う)に登場するものですが、この様に繰り返し「北からの侵略」を訴えているのです。「神も預言(及び予言)も啓示も全(すべ)て信じない!!」 そう言う方も居られる事でしょう。それはそれで一向(いっこう)に構いません。然し、預言に語られた「北からの侵略」と、現実に於ける露国の動向。奇(く)しくもリンクしている様に思えてならないのは、果たして私一人でしょうか? 預言が外(はず)れ、この先、何も起こらないかも知れません(まあ、それはそれで喜ぶ可き事だが)。然し、「何も起こらない」様にする為には、日本にもそれなりの努力が必要。日本が仮想敵国に対し、日本への侵略を諦(あきら)めさせるに足(た)る万全の備え(防衛体制)を整えて、初めて達成されるものでは無いでしょうか? その意味に於いても、日本は「中国」(及び北鮮)にばかり気を取られる事無く、もう一方の仮想敵国、露国に対する備えもしっかりと整えておく必要があると言えるのです。(了)


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