Reconsideration of the History
117.「移民」による既成事実化 ── 支那の領土拡張手段 (2003.3.21)

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前、私はコラム『100.台湾は「日本の生命線」 ── 「台湾問題」の向こう側にある「もの」』で、「中国」(支那)が本来、自国領と考えている地域について触れました。そして、支那は現在も少しでも隙があれば、「自国領」と考えている地域を「回復」しようと虎視眈々と狙っています。とは言え、戦後間もない時期に併合した満州・内蒙古・チベット・ウイグル(新疆)と言った地域の様に、侵略し強引に併合する事は現在の状況ではおいそれとは出来ません。当時は、大戦後に生まれた米ソ冷戦構造の中で、米国を盟主とする「西側」と、ソ連を盟主とする「東側」が対立していました。1962(昭和37)年の「キューバ危機」にも見られた様に、東西両陣営の対立が激化する事は、すなわち「第三次世界大戦」を誘発する危険性があった訳です。その様な状況下で、支那は「第三世界」の盟主を自負し、東西両陣営対立の間隙を縫って周辺地域の侵略・併合に成功した訳です。しかし、ソ連が崩壊し米国が「世界で唯一の超大国」の座にある現代では、かつてと同じ手法を採る事が出来難くなっています。そこで、支那は別の方法で失地回復を画策しています。それも支那の「お家芸」を使って。と言う訳で、今回は、支那の「お家芸」を通して、現在も着々と進んでいる支那による「静かなる侵略」について書いてみたいと思います。

那の「お家芸」とは何なのか? そのキーワードはずばり、「人」(の数)です。なにせ、支那は世界最大の人口大国です。こと「人」に関しては、何の不足もありません。かつて、物凄い数のエキストラを使った医薬品のCMが日本国内で放映された事がありました。それは正に「人海戦術」と言うに相応しい物だったのですが、その「人」を武器に、支那は「静かなる侵略」を進めているのです。

えば、ロシア極東の北満州(中心都市はハバロフスク)は、清の咸豊8(1858)年に締結された愛琿(アイグン)条約、同じく沿海州(中心都市はウラジオストーク)は、咸豊10(1860)年に締結された北京条約で、それぞれ当時の清国からロシア帝国に領有権が移った地域なのですが、現在の支那はロシア極東地域を「潜在的自国領」として回復すべき地域の一つと考えているのです。とは言え、1969(昭和44)年3月のダマンスキー島(烏蘇里江の中洲)事件、同年7月のゴルジンスキー島(黒竜江の中洲)事件で、旧ソ連との間に大規模な武力衝突を引き起こし、両国関係が最悪となった苦い経験がある支那にとっては、「唯一の超大国」米国との対抗上、ロシアとの友好関係維持は絶対条件です。ですから、軍事力に物を言わせた明らさまな侵略・併合と言う手段は到底使えません。しかし、「潜在的自国領」の回復には、何も軍事力だけが有効とは限りません。必ずしも、即効性では無いものの、確実に回復可能なある有効な手段があったのです。そして、支那はその手段を使って、今現在、ロシア極東地域に対する「静かなる侵略」を着々と進めています。

1991(平成3)年8月、ゴルバチョフ・ソ連大統領の「ペレストロイカ」(改革)に危機感を抱いたヤナーエフ等軍部・保守派が起こしたクーデター ── 所謂「3日間クーデター」が失敗。同年12月、ソ連邦が解体消滅し、旧ソ連の主要地域はロシア連邦に生まれ変わりました。その後、新生ロシアは、「民主化の英雄」エリツィン大統領の指導の下、社会主義計画経済から資本主義市場経済への移行を目指しましたが、急速な自由化は社会の各所で混乱を招き、インフレと物価の上昇・貧富の格差拡大・失業者の増加等でロシア経済は事実上破綻しました。そして、その影響は首都モスクワから遙か彼方のロシア極東地域に迄及んだのです。

済の急速な悪化で、ロシア極東地域には中央からの物資が滞り始めました。それと前後する形で、1980年代から、支那人商人達が生活物資を携えて黒竜江省や吉林省から国境を越えてロシア極東地域に侵出、地元経済を掌握した支那人商人達は故郷から家族をも呼び寄せて、ロシア領内に「チャイナタウン」を次々と形成しているのです。これは地元でも非常に大きな問題となっているのですが、中央から生活物資が届かないロシア極東地域では、彼ら支那人商人達が支那本国から運んでくる物資に頼らざるを得ない現実があります。加えて、ロシア政府や地元行政府にしても、支那側を追求して事を荒立てると、逆に自らの行政責任(物資の供給の遅滞)が追求されかねない訳で、例え苦々しく思ってはみても、黙認するしか手が無いと言うのが実情な訳です。

て、ロシア極東地域における支那人の「侵出」について触れた訳ですが、この手法は何も今に始まった事ではありません。元来、「満州人の土地」であった筈の「満州」 ── 現在、支那が「中国東北部」と称している地域にしても、大量の支那人移民(入植者)によって乗っ取られましたし、分離独立運動が盛んなチベット自治区や新疆ウイグル自治区でも、「西部大開発」の名の下に大量の漢民族入植者を送り込み、チベット族やウイグル族を当地における「少数民族」(漢民族の大量流入で人口の上で少数派)に転落させ、漢民族との通婚を強要する政策の推進によって、最終的には「純粋種」としてのチベット族やウイグル族の根絶 ── 「民族浄化」を画策しているのです。つまり、ある地域に大量の支那人を合法・非合法を問わず入植させる事で、その地域に「チャイナタウン」を形成、既成事実を積み重ねる事で実効支配し、「事実上の中国領」を構築している訳です。これこそ、正に人海戦術の国ならではの武器(人)を使った「静かなる侵略」と言えるでしょう。

に言えば、支那人は元来、狡猾で商業に長けており、総人口の僅か5%でしか無い華僑が、経済の90%以上を牛耳っているインドネシアや、マハティール首相の「プミプトラ」政策(マレー人優遇政策)によって制約を課されているマレーシアの華僑に見られる様に、東南アジア経済は概ね華僑に牛耳られている訳です。しかし、その彼ら華僑達には、インドネシアなりマレーシアと言った自らの暮らす国家に対する愛国心や忠誠心は殆どありません。地域への貢献・還元等と言う考え方自体がそもそも希薄なのです。ちなみに、マレー半島の最南端に、シンガポールと言う小国がありますが、この国は、1963(昭和38)年、英国からマレーシア連邦が独立した際には、同国を構成する一州でしかありませんでした。しかし、僅か2年後の1965(昭和40)年、マレーシアから分離独立し、現在に至っているのですが、実はシンガポールと言う国は華僑主体の国なのです。では何故、わざわざマレーシアから分離独立したのか? 色々と理由はあるのですが、一言で言えば、彼ら華僑(支那人)は、「血縁の人間しか信用しない」から、と言う事になります。だからこそ、マレー人やインドネシア人と打ち解けられず、わざわざ、シンガポールと言う「華僑の国」を作った訳です。そして、シンガポールに代表される東南アジアの華僑達は、経済活動で得た莫大なカネを自国にでは無く、支那に送金しているのです。これは言い換えれば、支那(人)による東南アジアの「経済的支配」共言える現象です。

があちこちに飛んでしまいましたが、現在の支那は「潜在的自国領」の回復の為に、

手段 主な該当地域
軍事的 軍事力を使って侵略・併合し、実効支配する事で既成事実化 満州・内蒙古・チベット・ウイグル
経済的 地域経済を掌握する事で経済的に支配 東南アジア
人口的 大量移民・入植者によって「チャイナタウン」を形成、実効支配 ロシア極東地域

の三本柱を以て、目標を達成しようとしています。と同時に「中国」は、我々の領土観とは全く異なる領土観を持っています。すなわち、

中国人が住み、中国の影響が及ぶ地域は、全て「中国」である

と言うものです。こう言った事を充分認識した上で、日本は支那(人であり国家)と対する必要がありますし、それが無くては、尖閣諸島問題を含めたあらゆる問題で、日本は狡猾な支那に対抗出来ないのでは無いかと思うのです。


   余談(つれづれ)

前、某内閣の某閣僚が、「日本も移民の受け入れを解禁すべきである」と言った趣旨の発言をした事がありました。しかし、この様な事が実現したりしたら、一体どの様な結果が待っているのか? 例えば、支那沿岸部の福建省等から、チャイニーズ・マフィア「蛇頭」(スネーク・ヘッド)等の手引きによって、日本へ密入国しようと企てる者が後を絶ちません。いや、後を絶たないどころか、その数は毎年増加傾向にあるのです。又、言う迄も無い事ですが、彼らは「不法な手段」で日本に入国するので、当然ながら、真っ当な職に有り付ける筈も無く、犯罪に走る者も数多くいます。そして、近年の外国人犯罪増加の陰には、彼ら密入国した支那人(外国人登録されていないので、摘発逮捕されなければ身元の把握は困難)も深く関与しているのです。今でさえ、この様な状況なのです。ここで、もし、移民受け入れを合法化・解禁等しようものなら、その先は・・・見えています。更に言えば、日本は曲がりなりにも「民主主義」の国です。そして、「民主主義」の根幹は、政治に民意を反映すると言う事です。だからこそ、選挙で議員を選ぶ訳ですが、移民を解禁し、彼ら定住外国人に参政権を付与しようものなら・・・人口に物を言わせた彼らが「合法的」に日本の政治を左右する事も充分考えられる事です。

「移民」による既成事実化 ── 支那による「静かなる侵略」手法や様々な弊害を考えると、日本の移民受け入れについて、私は反対を表明せざるを得ないのです。(了)


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