Reconsideration of the History
136.「日本国」に非ず!! 日本は今でも「大日本帝国」である (2004.11.18)

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「日本の正式な国号(国名)は一体何でしょう?」と質問されたら、皆さんはどの様に答えられるでしょうか? 先(ま)ず百人中、百人が「日本国」と答えるでしょう。しかし、私は敢えて言います。日本は今も尚、

大日本帝国

なのだ、と。では、何故(なぜ)、そう言えるのか? と言う訳で、今回は、日本の国号問題について書いてみたいと思います。

ず、最初に、「日本国」と言う国号について触れてみたいと思います。この「日本国」と言う国号が、「大日本帝国」に代わって登場したのは、昭和21(1946)年11月3日に公布され、翌昭和22(1947)年5月3日に施行された『日本国憲法』に於いてです。それでは、国号がどの様な経緯を経て、「大日本帝国」から「日本国」へと変更されたのか?と言う事ですが、実は、昭和天皇が「国号変更に関する詔勅」なるものを渙発(かんぱつ)された訳でも無ければ、帝国議会に於いて国号変更に関する法律が可決成立、施行された訳でもありません。つまり、「大日本帝国」から「日本国」への国号変更は、法的手続きを経(へ)る事無く、『日本国憲法』の名称・条文中に於いて唐突に行われた訳です。

「日本国」への国号変更は、法的手続きを経る事無く、『日本国憲法』の誕生と共に行われた。端的に言えば、そう言う事になる訳ですが、果たして、その様な事が法理面から言って、罷(まか)り通る事なのか?と言う疑問が出てくるのも当然です。この事について、ある法律専門家に照会した所、この様な回答が返ってきました。

「『国号』は、国家の基本法である『憲法』で定められる事を原則とします。我が国の国号が『日本国』である事は、『日本国憲法』第1条の規定
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
から見て、疑問の余地はありません。」
つまり、法理面から見れば、『日本国憲法』の施行を以て、日本は「大日本帝国」から「日本国」へと国号を変更した事となり、正当な手続きを踏んでいると言う事になる訳です。しかし、私はそれでも敢えて、

日本は今でも「大日本帝国」である

と断言します。

「日本国」と言う国号は『日本国憲法』に依拠している、と書きましたが、では、その依拠の元となっている『日本国憲法』は果たして正当なものなのか? 私は、以前のコラム120.「不磨の大典『日本国憲法』は国際法違反の産物」に於いて、『日本国憲法』が法的には無効である、と喝破(かっぱ)しました。何故、無効なのかについては、同コラムをお読み頂くとして、『日本国憲法』が法的に無効である以上、それに依拠して為された「大日本帝国」から「日本国」への国号変更についても、法理面から見て無効であると言う事になります。それは裏を返せば、「大日本帝国」と言う国号が正当なものであると言う事にもなる訳です。とは言え、

「いやいや、そんな事言ったって、21世紀にもなって、今更、日本は「大日本帝国」だなんて言われても実感なんて湧かないし、まして、前近代的な「帝国」だなんて・・・」
と言った声も聞こえてきそうですね。確かに、広い世界を見渡しても、「帝国」と名の付く国は一つもありません。しかし、日本が「帝国」である事は紛れもない事実なのです。

前も取り上げた事ですが、日本の「天皇」は英語で「エンペラー」(Emperor)=「皇帝」と呼ばれています。(但し、隣の韓国では今尚、『日王(イルワン)』、と「エンペラー」よりもワンランク下の「キング」(King)扱いですが) しかも、この「エンペラー」は世界中で日本の「天皇」唯(ただ)一人。どうりで、世界中をくまなく探しても「帝国」が見つかる筈がありません。何故なら、

「帝国」とは「皇帝(エンペラー)」が統(す)べる国

の事だからであって、「皇帝」もいないのに「帝国」を名乗る国のある方が不自然な訳です。(欧州を中心に、「キング」=「国王」がいる国は、今でも「王国」を名乗っている) そして、「エンペラー」=「天皇」がいる国、日本が広い世界で唯一、「帝国」を名乗る資格を有しているのです。とは言え、こんな事を仰(おっしゃ)る方もいる事でしょう。
「日本は戦前の『軍国主義』と訣別し、『現人神(あらひとがみ)・国家元首・大元帥(だいげんすい)』だった天皇も、『日本国の象徴であり日本国民統合の象徴』として実権を持っていない。現に、政務は内閣総理大臣が執(と)っているし、『帝国』どころか、民主主義に基づいた『共和国』と言っても過言では無い」
果たして、本当にそうなのでしょうか? それこそ、とんだ勘違いだと思うのです。

もそも、「『帝国』とは何ぞや?」と言う疑問に対して、私は「『帝国』とは「皇帝(エンペラー)」が統べる国」と答えました。これは、「帝国」の語句を入れ替えれば、そのまま、「王国」にも、ルクセンブルク「大公国」にも、モナコ「公国」にも当て嵌(は)まる話です。「帝国」と言うと、どうも、ロシア帝国や、ドイツ第二帝国(プロイセン)の様な絶対王政国家(専制君主制)が真っ先に思い浮かぶ様ですが、それは18世紀から19世紀にかけて「流行」した政体であって、必ずしも「帝国」とイコールではありません。例えば、タイは国王を戴(いただ)く「王国」ですが、憲法があり(立憲)、政治も首相を長とする政府(内閣)が担当しており、普段、国王は政治に口を挟(はさ)みません。しかし、クーデターが発生する等して、国内が乱れた際には、国王は「調停者」として機能、その一言々々が絶大な発言力を有します。つまり、タイの政体は「立憲君主制」であり、国王に絶大な権力が集中する「専制君主制」では無い訳です。更に言えば、どんなに民主化しよう共、「国王」を戴き続ける限り、その国家は「王国」である訳です。これは、日本にも当て嵌まる事です。日本が憲法を持ち(立憲)、国民によって選ばれた議員によって国会が営まれ(議会制民主主義)、その国会議員の中から首相以下閣僚(一部、民間人の起用が可能)が選ばれ内閣を組織(議院内閣制)し実際の政治を行っているとしても、「天皇」=「エンペラー」を戴いている以上、立憲君主制の「帝国」である事は疑うべくも無い事なのです。

後に、「国璽」の話でこのコラムを締め括(くく)りたいと思います。先ず、「国璽」が一体何なのか?と言うと、早い話が、「国家の実印」の事です。

 国璽 (こく-じ)

国家の表章として押す官印。我が国では明治元(1868)年初めて使用。現行の物は明治7(1874)年に改刻された方3寸の金印(それ以前は、方2寸7分の銅印)で、京都の篆刻家、安部井櫟堂(あべい-れきどう)による作。『大日本帝国憲法』下では、批准書・全権委任状・信任状等の国書・親書及び勲記等に用い、御璽(ぎょじ:天皇の金印)と共に内大臣が保管したが、現在は勲記にのみ用い、侍従職が保管。
その「国璽」には一体何と刻まれているのか? それが何と、「大日本国璽」(下写真が印影)

 大日本国璽

と刻まれているのです。現在の国号は「大」の字を冠さない「日本国」と言う事になっているにも関わらず、「国璽」に刻まれている文字は「大日本」。とは言え、中には、こんな事を仰る方もいる事でしょう。
「『大日本帝国国璽』と言った具合に『帝国』の文字が入ってはいないし、刻まれている『大日本』にしても、『大』の字は単なるお飾りなのでは?」
いえいえ、とんでもありません。現在使われている「国璽」は明治7(1874)年に鋳造された物で、れっきとした「大日本帝国」時代の代物。裏を返せば、国号が「大日本帝国」から「日本国」に変更されたにも関わらず、「国璽」は「大日本帝国」時代の物をそのまま使い続けている訳です。(漏れ聞く所に拠ると、GHQによって『日本国憲法』が「制定」された際、これを快く思わなかった関係者が新国号「日本国」に見合った「国璽」を新造する事無く、敢えて、「大日本帝国」時代からの「国璽」を踏襲する事で「抵抗」の意を示したとか)

(いず)れにせよ、

  1. 「日本国」と言う国号は『日本国憲法』に依拠しているが、その『日本国憲法』が国際法違反の産物である以上、それに依拠している「日本国」と言う国号に正当性は認められない。
  2. 日本が天皇を戴く国家である以上、たとえどの様な政体であろう共、「帝国」である事に疑問の余地が無い。
  3. 日本の「国璽」は、「大日本帝国」時代の物を未だに用いており、その刻印には「大日本」と刻まれている。
である以上、日本の国号が、誰もが疑問を持つ事さえ無かった「日本国」では無く、「大日本帝国」である事は疑うべくも無い事なのです。

   余談(つれづれ)

「大日本帝国」等と言うと、何やら、「戦前の軍国主義体制復活!!」等と言い出す人も出そうですが、「大日本」=膨張主義(対外侵略主義)と言うのは的外(まとはず)れの言説です。もしも、そうであるならば、「大韓民国」(韓国)や「大(グレート)ブリテン及び北アイルランド連合王国」(英国)は一体どうなるのか? どちらも「大」(グレート)を国号に冠していますが、その事については、とんと聞いた事がありません。「大韓」や「大ブリテン」は良くて、「大日本」はけしからん、では整合性がありません。又、「帝国」にした所で、国王がいる国が「王国」と呼ばれている以上、天皇(エンペラー)がいる日本を「帝国」と呼ぶのは当然の事です。但(ただ)し、どうしても「帝国」と呼ぶ事が受け容(い)れ難(がた)いと言うのであれば、こう名乗るのも良いかも知れません。「天皇陛下が統べる国」、

大日本皇国

略して、「皇国」と。(了)


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