Reconsideration of the History
13.「天皇」の称号は日本の専売特許ではなかった!! (1997.7.19)

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皇」と言えば「日本」。これが皆さんの常識だと思います。確かに現在、世界中の何処を見渡しても、「天皇」と言えば、それはイコール日本の天皇でしょう。しかし、「天皇」の称号が日本の専売特許等ではなく、かつて、大陸で「天皇」の称号がブームになっていたと言ったら、皆さんはどう思われるでしょうか? 今回は「天皇」の称号を通して、皇室の出自について考えてみたいと思います。

ず、「天皇」の読み方について。普通、これを私達は「テンノウ」と読みます。しかし、「天皇」には他の読み方もあるのです。古くは「スメラミコト」「スメロギ」等ですが、時系列から行くと、

ミコト(尊)→スメラミコト→テンノウ(天皇)
と言う順になります。古代天皇の称号は「スメラミコト」でした。しかし、中国を盟主とする漢字文化圏との関係上、称号を漢字で表記する必要が生じたのも無理からぬ事でした。そこで、「スメラミコト」の漢字表記として編み出されたのが、「天皇」の二文字でした。我国は古来より、四方を海に囲まれた地勢と、「東方君子の国」としての自負より、中国と対等であらんと欲していました。中国の最高権力者の称号は誰もがご存じの「皇帝」です。そして、中国の歴代王朝からすれば、中国以外の周辺諸国は「皇帝」よりもワンランク下の「王」でしかありませんでした。普通なら、日本の「スメラミコト」も漢字表記では「王」の称号となる所ですが、日本がそれに甘んじる訳がありません。中国と対等であらんと欲すれば、中国同様、「皇帝」の称号を使う事になります。しかし、中国への国書にこの「皇帝」の称号を使えば、当時の情勢では間違いなく戦争になっていたでしょう。つまり、「東アジア世界に二人の盟主は必要ない」と言う訳です。そこで選ばれたのが、「皇帝」でもなく、しかも「王」でもない、「天皇」の称号だったのです。そして、中国側が「天皇」の称号を追認したのには、先例があったからこそなのです。

代は中国・五胡十六国時代。魏・呉・蜀の三国時代は、魏の後継王朝・西晋によってようやく統一されました。しかし、西晋王室の内紛(八王の乱)により、西晋はあっけなく滅亡してしまいます。その後、華北(北部中国)には、匈奴・鮮卑・羯・・羌の五つの異民族、いわゆる「五胡」が各地に王国を建国する群雄割拠の時代、五胡十六国時代を迎えるのです。そして、この五胡十六国時代に「天皇」の称号はブームを起こすのです。この時代、「五胡」と呼ばれた遊牧騎馬民族の部族長は、「単于」(ぜんう)「大単于」と言った称号を名乗っていました。しかし、国を建てその王となると、「王」としての称号が必要になりました。ある者はそのまま、「王」を名乗りましたが、中には、中国王朝同様、「皇帝」を名乗る者や、「皇帝」よりもワンランク下の「王」を嫌い、独自の称号を名乗る者も現れました。そんな彼らが名乗った称号が「天王」(テンノウ)だったのです。ちなみに、「天王」を名乗った主な五胡の王は下記の通りです。

国 名 王 名 称 号
後 趙 石虎(太祖武帝) 大趙天王
赫連勃勃(世祖武烈帝) 大夏王天王大単于
前 秦 苻健(高祖景明帝) 大秦天王大単于
前 秦 苻堅(世祖宣昭帝) 大秦天王
北 燕 馮跋(太祖文成帝) 大燕天王
後 涼 呂光(太祖懿武帝) 大涼天王

「天皇」と「天王」。「皇」と「王」の違いこそあれ、どちらも読み方は「テンノウ」なのです。そして、この「天皇」(あるいは「天王」)の中国風称号にこそ、皇室の出自を解く鍵が隠されているのです。

ぜ、日本の皇室が、モンゴルやチベット系遊牧騎馬民族の間でブームとなった「天皇」の称号を採用したのでしょうか? 奈良時代、日本の天皇は国書に「天皇」の称号の他に「日本国主明楽御使」と言う称号を使った時期があります。「主明楽御使」とは「スメラミコト」と読み、「テンノウ」よりも古い時代の称号です。つまり、「テンノウ」よりも、よりレトロな称号「スメラミコト」が復古したのです。しかし、その後、「主明楽御使」の称号はすたれ、現在に至るまで「天皇」の称号が継続しているのです。では、なぜ、皇室は「天皇」の称号を採用し、現在に至るまで、使っているのでしょうか? その答えは一つ。皇室の出自が北方系遊牧民族だからなのです。これは嘘でも何でもありません。現に大部分の現代日本人のDNAは、ブリヤート(モンゴル)人と共通なのです。つまり、現代日本人と、ブリヤート人は、同じ祖先から分かれた民族なのです。時代を遡れば遡る程、日本人とモンゴル人は近くなっていくのです。そう考えると、モンゴル人(五胡の内の匈奴と羯)の間で使われた「天王」の称号を、日本の皇室が採用したとしてもおかしくないのです。むしろ、「天王」から「天皇」へ若干の手直しをし、「皇帝」と同列に格付けした事が、現在に至るまで継続使用される事となった理由ではないでしょうか? だからこそ、現在、日本の天皇は英語表記で、"king"(王)ではなく、"Emperor"(皇帝)なのです。


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