Reconsideration of the History
234.空母保有だけでは無い! 「資源大国日本」を守る為にも海軍力を充実させよ! (2011.2.25)

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成22(2010)年9月7日、尖閣群島周辺の日本領海へ侵入し違法操業、それを発見した海上保安庁巡視船の停船命令に従う事無く逃走を図り、二度迄も自船を巡視船に衝突させた挙げ句に逮捕・勾留された「中国」(支那)人漁船船長(一部には漁民に偽装した現役軍人と言う話もあるが)詹其雄(せん-きゆう,ジャン=チーション)容疑者。その詹容疑者が平成22年9月24日、「超法規的措置」により釈放され、チャーター機で本国に「凱旋(がいせん)」した事は未だ記憶に新しい事でしょう。そして、この日 ── 平成22年9月24日は、戦後日本外交にとって最大の恥辱、

日本が理不尽な中国に屈服した日

として永く語り継がれる事となるでしょう。然(しか)し、何故(なぜ)、日本 ── 菅=仙谷民主党政権は日本側に一切の非が無いにも関わらず、傲慢且つ理不尽な態度を取った「中国」に屈服したのでしょうか? 一つは、民主党政権が「親中」いや「媚中」的体質である事に起因しますが、最大の要因は世界シェアの93%を握る「中国」からの輸入に全面的に依存、日本のお家芸共言えるハイテク製品製造に必要不可欠なレアアース(希土類)の対日禁輸に屈服した事。詰まり、

「持たざる者」日本が、「持つ者」中国に負けた

事に尽きます。然し、天然資源が自国域内から産出せず、輸入に頼らざるを得ない「資源小国日本」と言う現実 ── 我々の多くがそう思い込んでいる状況 ── はそう遠くない将来、劇的に改善され、逆に「資源大国日本」として、国産資源を輸出する側に回るかも知れません。

えば、尖閣諸島沖漁船衝突事件の発生後、「中国」は日本に対し、事実上のレアアース対日禁輸措置を取り、「中国」から日本へのレアアース輸出は全面停止しました。幸いにも日本国内に在庫(備蓄)があったので、工業生産に直ちに影響が出る様な事態とはなりませんでしたが、この事態を受け、日本国内では「中国」からの輸入に全面的に依存してきた従来からの体質を改め、レアアースを他の産出国からも輸入する事で、万が一の「売り惜しみ」に対応す可(べ)くリスク分散策に転換しましたし、更には希少で高価なレアアースに代わる安価で入手しやすい代替物質の研究開発にも着手しました。そして、極め付けはレアアース自体を日本の域内で採掘確保する方針をも打ち出した事です。

日本最東端、小笠原諸島の南鳥島(マーカス島)
日本最東端、小笠原諸島の南鳥島(マーカス島)
本州から離れる事1,800km、日本海溝の東側に位置する日本最東端の島。島は珊瑚礁に囲まれており、外側は水深1,000m級の断崖であるものの、内側は水深が浅く大型船舶の接岸は不可能。島との往来は専(もっぱ)ら唯一ある滑走路を利用する事になるのだが、現在、気象庁と海上自衛隊南鳥島航空派遣隊の職員が常駐するだけで、一般人が島に上陸する事は認められていない「日本人であっても行く事の出来ない日本の島」である。
「日本でもレアアースが産出する?」 皆さんの中には狐(きつね)に摘(つま)まれた思いの方もおありでしょう。然し、これは空想でも夢物語でもありません。現実です。日本は今年、平成23(2011)年4月から日本最東端の島、小笠原諸島の南鳥島(みなみとりしま;別名「マーカス島」)近海の排他的経済水域(以下、「EEZ」と略)内に於いて、延べ40日の期間を要して大規模な海底資源調査が行いますが、この近海にはマンガン・コバルト・ニッケル・白金(プラチナ)と言ったレアメタル(希少金属)だけで無く、トヨタのプリウス・ホンダのインサイトと言ったハイブリッド車や電気自動車のモーター製造に必要なネオジム・ジスプロシウムと言ったレアアースが豊富に埋蔵されている可能性が極めて高く、これらを日本が独自に採掘生産しようとしているのです。日中中間線の線引きが絡む東支那海の瓦斯田(ガスでん)問題や、海底石油埋蔵の可能性が取り沙汰された事で「中国」も領有権を主張し出した尖閣群島とは異なり、南鳥島近海のEEZに日本が鉱区を設定して海底資源の商業生産をするとなれば、流石(さすが)の「中国」とて指を咥(くわ)えて見ているしかありません。然も、日本が自国でレアアースを生産するとなれば、日本を恫喝し屈服せしめた有力なカードとしての「中国」産レアアースの効力は最早(もはや)意味を為さなくなる事でしょう。然し私が、そう遠くない将来、日本が「資源大国」となると書いたのは、何もレアアースの国産が実用化されるからだけが理由ではありません。

「燃える氷」共呼ばれるメタン-ハイドレート
「燃える氷」共呼ばれるメタン-ハイドレート
さんの家庭生活 ── いや現代文明生活 ── に於いて必要不可欠な資源の一つに液化天然瓦斯(LNG)があります。日本が消費するLNGの内、国内で生産される量はたったの4%しか無く、残りの96%を海外からの輸入に頼っており、平成21(2009)年時点に於いて、日本は約6,635t ── 世界の輸入量の凡(およ)そ35% ── もの膨大なLNGを輸入する世界最大のLNG輸入国となっています。供給国を見渡すと、インドネシア(19.2%:平成21年度割合 以下同)を筆頭に、マレーシア(18.9%)・オーストラリア(18.8%)・カタール(12.1%)・ブルネイ(9.0%)・アラブ首長国連邦(7.7%)・ロシア(6.5%)・オマーン(4.2%)と続き、幸いにも多くの親日国が名を連ねている事が救いとなっては居(い)ますが、北アフリカはチュニジアに端を発した市民デモ・革命の流れが中東地域全体に波及している昨今の時局を鑑(かんが)みると、同地域からの輸入だけで、全輸入量の2割強を占めるLNGの安定供給に少なからぬ影響を及ぼしかねない不安があります。然し、この不安を払拭(ふっしょく)し、消費量の殆(ほとん)どを輸入に依存してきた天然瓦斯に付いても、日本は国内生産で消費を賄(まかな)う事が充分可能な態勢が、国産レアアース同様、そう遠くない将来実現されるのです。そして、その資源の名を「メタン-ハイドレート」と言います。

日本近海のメタン-ハイドレート推定埋蔵域
日本近海のメタン-ハイドレート推定埋蔵域 (赤色部分)
タン-ハイドレート ── 近年よく耳にする様になった資源ですが、これは別名「燃える氷」共呼ばれ、天然瓦斯の主成分であるメタンが、高圧・低温の海底下や凍土下でシャーベット状に固まった状態の物質です。このメタン-ハイドレートに付いては、1990年代に日本のEEZでも確認され、日本で消費される天然瓦斯の実に90年分に相当する埋蔵量があるとされてきましたが、更に平成19(2007)年、経済産業省が静岡県から和歌山県沖に掛けての東部南海トラフを本格調査した所、調査海域だけでも、日本で消費される天然瓦斯の14年分に相当する凡そ1兆1千億m3の埋蔵量が確認されたのです。詰まり、今後、調査開発が進めば、更に優良且つ膨大な埋蔵量が確認される可能性が高い訳です。然も、従来の採掘生産技術では、海底下から採掘したメタン-ハイドレートからメタン(天然瓦斯)を抽出するのにコストが掛かり過ぎて採算が合わなかった(赤字)ものが、技術革新により大幅に改善。日本は、平成30(2018)年度迄には実用化技術を確立し、平成31(2019)年度から本格的な商業生産を開始する方針を打ち出したのです。詰まり、日本が「世界最大のLNG輸入大国」から一気に「世界有数の天然瓦斯産出国」になるのも、もう目前に迫っているのです。そして、更に日本は、ある地質的特徴から、「世界有数の資源大国」となる可能性すらあるのです。

タリアはヴェネチア(ヴェニス)の商人マルコ=ポーロが、口述録『東方見聞録』(『イル-ミリオーネ』 Il Milione)に於いて、

「カタイ大元大蒙古国=支那大陸)の東の海上1500哩(マイル)に浮かぶ独立した島国であり、莫大な金を産出し、宮殿や民家は黄金で出来ている等、財宝に溢(あふ)れている」

海底熱水鉱床
海底熱水鉱床
別名「チムニー」共呼ばれ、海底から煙突状に鉱物の塊が突き出ている。
明神礁
ベヨネース列岩
明神礁の西南約10kmに在る明神礁の外輪山。
西之島
西之島
下側の黒い部分が西之島新島。現在は西之島と一体化している。
南硫黄島と福徳岡ノ場(海面変色域)
南硫黄島と福徳岡ノ場
南硫黄島(みなみいおうとう)の手前、海面が変色している区域が「福徳岡ノ場」と呼ばれる海底火山だ。
と伝えた「黄金の国ジパング」=日本黄金伝説。この記述は、平安時代末期の11世紀から12世紀に掛け、奥羽(おうう;陸奥国(むつのくに)及び出羽国(でわのくに)=現在の東北地方)の地に在(あ)って、莫大な黄金を湯水の如く用い、中尊寺金色堂や毛越寺(もうつうじ)・無量光院と言った大寺院を次々と建立(こんりゅう)、平泉(ひらいずみ)をして京の都(平安京)に勝る共劣らぬ大都市とした北方の覇者、奥州藤原氏の栄耀栄華がモチーフになったと考えられていますが、その「黄金の国ジパング」が文字通り現代に甦ろうとしていると言ったら、皆さんは如何(どう)思われるでしょうか? 金や銀と言った「お宝」は、金山や銀山からの採掘、川から採取する砂金と言った形で手に入る訳ですが、それらとは全く異なる形で日本は「お宝」を手にしようとしているのです。そして、それを可能にしているものは、世界有数の地震列島である日本の火山帯そのものなのです。

さんは、「海底熱水鉱床」(チムニー)と言う言葉を耳にした事があるでしょうか? 日本列島と日本を構成する諸島群は、ユーラシアプレート・北米プレート・フィリピン海プレート、そして、太平洋プレートが複雑に入り組んだプレート同士の接合点上に位置しており、それが日本をして、世界有数の火山列島・地震列島に為さしめている所以(ゆえん)である訳です。そして、活発な火山活動は現在、噴火をしている九州は霧島連山の新燃岳(しんもえだけ)の様な陸上火山だけで無く、昭和27(1952)年に噴火した伊豆諸島南部はベヨネース列岩(明神礁の外輪山)東方の明神礁(みょうじんしょう)や、昭和48(1973)年に小笠原諸島は西之島(にしのしま)付近の海底噴火で誕生した西之島新島(しんとう)、更には、明治37(1904)年以来、幾度と無く噴火を繰り返し、その度に新島(新硫黄島)を形成(形成後、波浪の浸食等により海没)してきた南硫黄島付近の福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)と言った海底火山にも及んでいます。これらの海底火山は文字通り海底に噴火口があり、高温のマグマと接する事で煮え滾(たぎ)った海水 ── 熱水(摂氏200〜400度)が噴出しているのですが、この熱水の溶液に比較的融点が低い金属が取り込まれたり、熱水による変質で周囲の岩石が粘土化したりと言った形で形成される熱水鉱床が見受けられます。この海底熱水鉱床からは、貴金属である金や銀、ベースメタル(卑金属)である銅・鉛・亜鉛・水銀、レアメタルであるガリウム・バリウム・白金、更にはアンチモンや粘土・珪石と言った様々な鉱物が産出。海底熱水鉱床の名に違(たが)わず、文字通り「鉱床」であるのです。然も、日本の領海・EEZ内には、伊豆・小笠原弧(こ)の明神海丘(かいきゅう)サンライズ鉱床(賦存水深 1,330m)・ベヨネース海丘白嶺(はくれい)鉱床(同 750m)・水曜海山(同 1,330m)や、沖縄トラフの南奄西(みなみえんせい)海丘(同 700m)・伊是名海穴(いぜなかいけつ)ジェイド熱水活動域(同 1,500m)と言った多くの有望な海底火山鉱床が存在し、マグマ活動により地球の中から次から次へと鉱物資源を噴出させています。詰まり、日本の権益が及ぶ海域は、実は金銀ざっくざくの「宝の山(火山)」の宝庫だった訳です。(「海底熱水鉱床」以外にも、主成分である鉄・マンガン酸化物と共にコバルトや白金、レアアースを含む「マンガン-クラスト」(コバルト-リッチ-クラスト鉱床)と言う海底資源も存在する) そして、これら海底熱水鉱床の開発と商業生産開始により、日本は正に「黄金の国ジパング」になろうとしているのです。(金や銀もさる事乍(なが)ら、レアメタルやレアアースが算出する価値は、奥州藤原氏時代の比では無い)

日本近海の海底熱水鉱床

日本最南端、小笠原諸島の沖ノ鳥島(パレセベラ礁)
日本最南端、小笠原諸島の沖ノ鳥島(パレセベラ礁)
東京から1,740km、小笠原諸島の硫黄島からでも720km離れた太平洋上に浮かぶ絶海の孤島(珊瑚礁)。写真の手前から順に、北小島(旧称「北露岩」)・観測所基盤・旧灯台跡人工島(観測施設)・東小島(同「東露岩」)が在り、同島周囲に半径200海里(370.4km)、約40万km2に及ぶ排他的経済水域を日本は有している。
沖ノ鳥島の東小島
沖ノ鳥島の東小島
沖ノ鳥島の東小島
沖ノ鳥島の内、東小島
東小島の本体は北小島と同様に、チタン合金の蓋(金網)とコンクリート護岸、更にはテトラポッド(消波ブロック)により幾重にも囲まれ、波浪の浸食から守られている。
中国人民解放軍海軍ソブレメンヌイ級駆逐艦
「中国」人民解放軍海軍ソブレメンヌイ級駆逐艦
平成22(2010)年4月、「中国」海軍東海艦隊所属のソブレメンヌイ級(杭州級)駆逐艦2隻・フリゲート3隻・キロ級潜水艦2隻・補給艦1隻等、延べ10隻からなる艦隊が沖縄本島と宮古島の間を抜け太平洋に向け南下。その儘、沖ノ鳥島周辺海域に進出し、日本の海洋主権に挑戦するかの如く示威行動を行った。
(さて)、この様に現代の最先端技術により、「資源小国」だった日本が、一躍「資源大国」に変貌するであろう事を論じましたが、何でもかでも欲しがる貪欲(どんよく)な隣国「中国」が、目の前に広がる「お宝」を唯(ただ)黙って指を咥えて見ているだけの筈(はず)がありませんし、それはロシアにしろ、韓国にしろ、皆同じ事です。「黄金の国ジパング」の「お宝」を巡って周辺の「列強」が虎視眈々(こしたんたん)と狙っていると言っても過言ではありません。(韓国による竹島に対する侵略占領=領土化は、単に漁場の確保が目的では無い。周辺海域の海底資源調査と採掘も重要な目的の一つである) 

緯20度25分・東経136度05分の太平洋上に浮かぶ一つの島があります。その名を沖ノ鳥島(おきのとりしま;別名「パレセベラ礁」)と言います。この島は東京から離れる事1,740km、東京都小笠原村に属すれっきとした小笠原諸島の一島なのですが、同じ小笠原諸島に属す硫黄島(いおうとう)からですら720kmも離れており、日本の最南端に位置しています。扨、この日本最南端の島、沖ノ鳥島ですが、その大部分は干潮時のみ海面上に顔を出す環礁(珊瑚礁)で、満潮時でも海面上に露出しているのは、面積僅(わず)か7.86m2(登記簿上)の北小島(旧称「北露岩」)と、同じく面積僅か1.58m2(同)の東小島(同「東露岩」)のちっぽけな小島のみ。島の最高標高もたったの15cm(15mの間違いでは無い)でしかありません。然も、此等(これら)の小島ですら、年々波浪の浸食により削り取られ、孰(いず)れは沖ノ鳥島の全てが海面下(満潮時)に隠れてしまう恐れがあった為、昭和63(1988)年以来、日本はテトラポッド(消波ブロック)やコンクリートによる護岸工事に着手。その後、小島全体を約300億円にも及ぶ巨費を投じてチタン合金で覆い、二つの小島がこれ以上浸食風化しない様、その保全に努めています。然し何故、それ程の巨費を投じて、ちっぽけな絶海の小島を守らねばならないのか? 皆さんの中には、民主党の「事業仕分け」ではありませんが、「無駄遣い」に感じられる方もおられる事でしょう。然し、沖ノ鳥島には、300億円もの巨費を投じるのに値する充分な価値があるのです。では、その価値とは一体何なのか? 実は、沖ノ鳥島(環礁全体)の面積自体は、たったの7.8km2しかありませんが、日本はこの島がある御陰(おかげ)で、周囲に半径200海里(370.4km)、約40万km2にも及ぶ広大なEEZを確保、範囲内の水産資源及び鉱物資源を調査し開発する事が出来る海洋主権を有しているのです。これは詰まり、沖ノ鳥島周辺海域に於ける漁業権と、海底資源の掘削開発権を日本が持っており、この日本の海洋主権を何人(なんぴと)たり共侵(おか)す事は許されない事を意味している訳です。然し、この日本の海洋主権を真っ向から否定し、沖ノ鳥島周辺の日本のEEZに平然と海洋調査船や軍艦を侵入させている国があります。それが「中国」なのです。

「中国」は、平成13(2001)年頃から、沖ノ鳥島周辺海域へと海洋調査船を派遣、度々(たびたび)、日本のEEZへの侵入と海底地形調査を繰り返しており、平成16(2004)年に開催された日中事務レベル協議の席上、日本側がこの件に関して「中国」に対し抗議した所、何と「中国」側は、

沖ノ鳥島は「島」では無く、「人の居住又は経済的生活を維持出来ない岩」であり、『国連海洋法条約』に基づく排他的経済水域を、日本が設定する事は出来ない

と反論、日本の海洋主権侵害に対する自国の行為を正当化しました。更に、平成22(2010)年4月には、浙江省寧波に司令部を置く「中国」人民解放軍海軍東海艦隊所属のソブレメンヌイ級(杭州級)駆逐艦やキロ級潜水艦等、延べ10隻の艦艇が沖縄本島と宮古島の間を抜け太平洋に向けて南下。その儘、沖ノ鳥島周辺海域に進出し、日本の海洋主権に挑戦するかの如く、あからさまな示威行動すら取ったのです。まあ、満潮時でも海面上に露出している北小島と東小島を合わせた所で10m2にも満たず、環礁の真ん中に観測施設の人工島があるだけで、この島で「経済活動」が営(いとな)めるか否(いな)かと問われれば厳しいと言わざるを得ませんが、だからと言って「中国」に沖ノ鳥島を単なる「岩」でありEEZは設定出来ないと言われる事自体が烏滸(おこ)がましい。何故ならば、彼ら「中国」とて、沖ノ鳥島と何ら変わらない「島」を領有し、実際にその「島」の周囲にEEZを設定しているのですから。

赤瓜礁
赤瓜礁
赤瓜礁
赤瓜礁
南沙諸島(スプラトリー諸島)の赤瓜礁(ジョンソン南礁)
大東亜戦争(太平洋戦争)に敗北した日本が、昭和26(1951)年、『サンフランシスコ平和条約』により新南群島(南沙諸島)を放棄すると、ジョンソン南礁はベトナムが統治し始めたが、昭和63(1988)年、環礁を急襲した「中国」軍により奪われ「赤瓜礁」と改名。今日に至る迄「中国」が占領統治している。島を占領した直後は粗末な「掘っ立て小屋」を建設しただけだったが、年を経る毎に近代化し、当初、「漁業目的の施設」と主張していたものが、現在では屋上に銃座迄配置する海上要塞と化している。
「中国」がEEZを設定している「島」は、東南アジア諸国との間で複雑に領有権争いが絡む南沙諸島(英語名「スプラトリー諸島」)の西北部に位置し、その名を赤瓜礁(せきかしょう;英語名「ジョンソン南礁」)と言います。島本体は人間が数人立っていられる程度の面積しか無く、その点では沖ノ鳥島の二つの小島と五十歩百歩と言った所です。この「島」は、日本が大東亜戦争(英語名「太平洋戦争」)に敗北し南沙諸島 ── 日本統治時代の呼称は「新南群島」 ── の領有権を放棄した後(のち)、ベトナムが統治していましたが、昭和63(1988)年3月14日、「中国」人民解放軍海軍が島を急襲、ベトナム兵を駆逐し占領してしまいました。この事件は赤瓜礁海戦(英語名「スプラトリー諸島海戦」)と呼ばれるもので、以後、「中国」は「島」に隣接する形で「掘っ立て小屋」 ── 彼らは小屋を「高脚屋」と呼び、「漁業目的の施設」と称している ── を次々と建設。小屋に漁民もとい海軍兵士を常駐させ、現在では沖ノ鳥島同様、「島」の周囲は完全にコンクリートにより埋め立てられ、立派な人工島と化しています。扨、この「中国」の赤瓜礁と日本の沖ノ鳥島。両者共に海面上に露出している部分の面積が非常に小さく、波浪の浸食から保全する為に「島」の周囲を覆って海水から隔絶している辺りは、さして変わりが無いのですが、「中国」は自国の赤瓜礁は「島」で、日本の沖ノ鳥島は単なる「岩」でしか無いと嘯(うそぶ)く始末。この辺りの矛盾に付いては、平成21(2009)年に、埜口興平(のぐち-こうへい)氏が指摘しているのをはじめとして、「中国」も突っ込まれてはいますが、飽(あ)く迄(まで)も自国の赤瓜礁は「島」、日本の沖ノ鳥島は「岩」との主張を曲げては居(い)ません。因(ちな)みに、沖ノ鳥島の二つの小島は満潮時でも海面上に露出しますが、赤瓜礁に付いては「島」を奪われたベトナム側の報道により、満潮時には海中に沈んでしまうとの事。若(も)しも、それが事実であるならば、赤瓜礁は「島」か「岩」かどころの話では無く、彼らが沖ノ鳥島を持ち出す迄も無く、EEZを設定する事が出来なくなる訳で、この辺りの所を日本側は「中国」側に強く指摘し、「中国」側の主張・姿勢を牽制す可(べ)きでは無いかと思うのです。

上、南鳥島からメタン-ハイドレート、海底熱水鉱床、そして、沖ノ鳥島と話を進めて来ましたが、日本の海洋主権を認めず、自国の海洋調査船や軍艦を平然と日本のEEZに侵入させてくる「中国」に対し、日本がこの儘(まま)手を拱(こまね)いていて良い筈(はず)がありません。急速な経済発展により資源が不足気味の「中国」は、形振(なりふ)り構わず、どの様な手段を用いてでも資源を獲得しようと躍起になっています。そして海洋に於いては、他国が領有統治していた島を支配の間隙を縫って急襲、ベトナムから赤瓜礁、フィリピンからはミスチーフ礁(支那名「美済礁」)を夫々(それぞれ)(かす)め、武装する兵士を常駐させた上で自国領に編入、周囲に勝手にEEZを設定して他国の海洋権益を侵害しているのが現実なのです。ましてや、「中国」は幾度と無く指摘している事ですが、近年、急速に海軍力を増強し、その軍事力を背景に日本を含む周辺諸国の海洋権益を我が物とせんと策動しているのです。

僕らのものは僕らのもの、君らのものも僕らのもの

突き詰めれば、「中国」の思考は正にこの様な発想であり、幾ら日本が自国の権益に付いて法理に基づいて理路整然と主張した所で、背景(バックボーン)となる「力」を伴っていなければ、「中国」に対しては全く通じません。左翼共産ゲリラ上がりの「中国共産党」による一党独裁国家であり、「銃口から政権が生まれる国」と称される「中国」にとっては、「力こそ正義」なのですから。ならば、日本も自国の海洋権益を守る為に、海軍力 ── 日本には建前上「海軍」が存在しないので、海上防衛力と言い換える可きか ── を増強するしかありません。空母の保有は当然の事として、哨戒艦(海上保安庁の巡視船が相当する)の数も増やし、日本の海洋権益を無視してEEZに侵入してくる「中国」の海洋調査船や漁業監視船は拿捕(だほ)、軍艦に対しても撃退する位の気概を持つ可きです。冒頭でも書きましたが、日本は「資源小国」どころか「海洋資源大国」であり、諸外国からも既に「隠れた資源大国」として認識されているのです。その権益をしっかりと守り、日本が自国域内から産出する資源を誰憚(たれはばか)る事無く有効利用していく為にも、虎視眈々(こしたんたん)と日本の資源を狙う「中国」をはじめとする諸国に対し、充分な海軍力(及び航空優勢を維持する為の空軍力)を背景に睨(にら)みを利(き)かせていく必要があるのです。(了)


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