Reconsideration of the History
51.戸籍を持たない「日本国民」〜日本のジプシー「サンカ」 (1999.4.7)

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さん(日本国民のあなた)は「戸籍」を持っていますか? こう言うと、「バカ言うなよ。誰だって戸籍があるに決まっているだろう!!」と思われるでしょう。でも、日本には「日本人」でありながら、「日本人の戸籍」を持たない人々が存在したのです。と言う訳で、今回は「戸籍を持たない日本人」について触れてみたいと思います。

籍を持たない日本人。「サンカ」(「山窩」、「山家」等と表記)と呼ばれる「彼ら」は街場(里)に住む我々(里人)とは違い、北は青森の下北半島から、南は鹿児島の大隅半島に至る日本列島の脊梁山脈や高地を移動し、「山」を生活の場として、何と二千年もの間、里人と共存してきました。「彼ら」は日本人でありながら、「主食」の米を食さず(非農耕)、「せぶり」と呼ばれる天幕で雨露をしのぎ、山野を自由に漂泊し(非定住)、常に体制(国家)に所属しません(非服属)でした。言わば、日本版「ジプシー」とでも言いましょうか。こんな「もう一つの日本人」がいたなんて・・・と驚かれた方もおありでしょうが、正真正銘、「彼ら」は「実在」したのです。

本のジプシー ── 「サンカ」。彼らは木地師(きぢし=ロクロ師)・蹈鞴師(タタラ)・狩人(マタギ)・樵(キコリ=木挽き)・漆屋・炭焼き・竹細工師・竿師・鋳掛屋(ふいご)・研屋(けんど)・山守(やもり)・田畑守(のもり)・川守(かもり)等を生業(なりわい)とし、お互いの「テリトリー」(生活圏と職業)を侵す事無く、里人と平和的に共存してきました。又、「彼ら」は山野を生活圏としていましたから、山に生まれ、山に死んでいった訳で、一ヶ所に定住する里人の様に「国勢調査」で、把握する事は事実上「不可能」でした。だから、「彼ら」には「戸籍」が無いのです。

制に決して服属しない「日本人」。「彼ら」は仲間内だけで通用する「隠語」を持ち、全国に独自のネットワーク(情報伝達網)を構築し、互いのコミュニケーションは極めて緊密でした。更に、「サンカ文字」と呼ばれる独自の文字迄持っていたのです。この「サンカ文字」は、「古史古伝」の『竹内文書』に登場する象形文字や、『上記』(ウエツフミ)に登場する「豊国(トヨクニ)文字」と酷似しており、同起源・同系統の文字なのは間違いありません(『上記』は豊後(ぶんご)国守・大友能直(よしなお)が「サンカ」から入手した文書を元に編纂したと言われている)。しかし、なぜ、「彼ら」は体制に服属しない「日本人」(戦前は徴兵・納税・義務教育の三大義務を拒否し、戦後は住民登録をも拒否) ── 「まつろわぬ民」・「化外(けがい)の民」として生きてきたのでしょうか? それは「彼ら」が、朝廷(体制)が「日本の支配者」になる以前の「日本の主役」(先住民)だったからなのです。だからこそ、「彼ら」は朝廷が「日本の支配者」になると、山野へと姿を隠し、自らのアイデンティティ(存在証明)を「保存」したのです。そして、その「彼ら」だからこそ継承し得たもの、それこそ、『記紀』(『日本書紀』と『古事記』)に代表される「官製史書」とは異なる歴史観を記した『竹内文書』・『上記』と言った「古史古伝」(『26.封印された超古代日本史〜「古史古伝」の世界』 参照)だったのです。


サンカ文字
▲サンカ文字の一例

参考文献


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