Reconsideration of the History
257.プーチンに北方領土返還を呑ませる奇策あり!! その為の日本の提案はこれだ! (2013.5.15)

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プーチン露大統領と会談する安倍総理
プーチン露国大統領と会談する安倍総理
平成25(2013)年4月29日、ロシアの首都モスクワはクレムリンに於いて、安倍総理はプーチン露国大統領と会談した。この席上、経済協力問題、平和条約締結問題と共に、両国間の永年の懸案である北方領土問題も話題の俎上に上った。上海協力機構(上海合作組織)の加盟国として同盟関係にあるとされるロシアと「中国」(支那)だが、ロシア製兵器のコピー問題や空母を含む海軍力の増強、更にはウラジオストク(ヴラヂヴァストーク)を含むロシア沿海地方(プリモーリイェ,外満州,北満州)に対する領土拡張の野心を持つ「中国」に対しロシアは警戒心を抱いており、対「中国」戦略として、「中国」と対立する日本との関係強化がロシアの国益に資するとプーチンは考えている。その為には北方領土問題の解決は避けて通る事が出来ないのだが、両首脳共に政権基盤である国内保守派支持層の意向は無視出来ず、対応に苦慮している。問題解決には、両国の威信が傷付かない形で、如何に国内世論が納得する「落とし処」を見つけられるかに掛かっている。
成25(2013)年4月29日、ロシア・中東三ヶ国(サウジアラビア・アラブ首長国連邦・トルコ)歴訪のトップを切って、ロシアを訪問した安倍晋三総理は、安倍総理同様再び政権トップの座に返り咲いたウラジーミル=プーチン大統領との首脳会談に臨みました。この会談に於いて、両首脳は両国間に棘(とげ)として刺さった儘(まま)の北方領土問題に付いても取り上げ、とりわけプーチン大統領は、ロシアが領土問題係争地の面積を二等分して境界を画定した「中国」(支那)、ノルウェーとの交渉例を引き合いに、北方領土問題解決の手段として日露間での折半に付いて言及したと言います。歯舞(はぼまい)群島・色丹(しこたん)島・国後(くなしり)島・択捉(えとろふ)島の南千島 ── 「北方四島」の返還を求める日本に対し、昭和31(1956)年調印の『日ソ共同宣言』に基づき歯舞・色丹二島の返還で決着を図りたいロシアとでは主張に隔たりが大きく、戦後70年になろうと言う今日に於いても問題の解決には程遠い中、プーチン大統領が言及した「二等分」提案。これが、ロシアが従来から唱える歯舞・色丹二島返還であるならば、何ら目新しさの無い取るに足らない提案である訳ですが、今回、プーチン大統領が持ち出したのは面積等分と言うもの。これは「中国」との間に、平成16(2004)年に合意、平成20(2008)年に確定したアムール河(支那名「黒龍江」)の源流、アルグン河(支那名「額爾古納(エルグナ)河」)のボリショイ島(支那名「阿巴該図(アバガイト)島」)及び、アムール河とその支流ウスリー河(支那名「烏蘇里江」)の合流点にあるタラバーロフ島(支那名「銀龍島」)・大ウスリー島(支那名「黒瞎子(ヘイジャーズ)島」)の三島に付いて、孰(いず)れもロシアによる実効支配地域であったにも関わらず面積等分で決着した例や、ノルウェーとの間に係争していた北極圏はバレンツ海と北極海の大陸棚約17万5千km2を平成22(2010)年に同じく等分で決着を図った例があり、その実績を踏まえた上で北方領土問題に於いても日露間で面積等分による決着を図っては如何(どう)かと打診してきたのでしょう。因(ちな)みに、北方四島に面積等分を当て嵌(は)めた場合、『日ソ共同宣言』で既に返還が言及されている歯舞・色丹二島は元より、国後全島、そして、択捉島の西部5分の1が返還される事になります。日本が求めている四島全面返還には満たないものの、四島を実効支配しているロシアからすれば、三島を丸々返還する上に、最大の島、択捉島の西部をも日本に明け渡す訳ですから、大きな譲歩と言っても良い内容でしょう。然し、私はロシアに対し更に大きな譲歩 ── 矢張り北方四島の全面返還を日本は求めていく可(べ)きだと思うのです。そして、面積等分以上に大きな譲歩を強(し)いられるロシアに、四島全面返還を呑ませる「奇策」を今回は披瀝したいと思います。

環日本海諸国図
 ▲通常我々が目にしている北東アジア地図
環日本海諸国図
 ▲90度回転、東を上にした北東アジア地図
シアが何故、広大な国土面積からすれば取るに足らない程、ちっぽけな北方四島の領有に固執するのか、皆さんはご存じでしょうか? その理由の一つは返還交渉を通じて日本から経済面を含む各種支援を引き出す為の「打ち出の小槌」であろう事は想像に難(かた)くありません。然(しか)し、経済面で見れば、「ちっぽけな島」を日本に返還する事で平和条約を締結、関係を全面的に正常化する事で、輸出入 ── とりわけロシアの有する天然ガス等の豊富な資源を日本に売り込むと同時に、各種技術援助も受け易くなる等、返還した方がロシアにとっても遙かにメリットが大きい筈です。然し、実際には返還は未だ実現していません。又、現島民のモスクワ(中央政府)に対する不満を払拭、彼らを「ロシア国民」として繋(つな)ぎ止める為にも、島のインフラ整備等、「(ロシア)本土並み」に充実させる振興策は不可欠ですし、その為には莫大な資金が必要になります。その様に考えると、ロシアにとっての北方四島の存在価値は経済面では「お荷物」であり、単純な損得勘定で考えれば手放してしまった方が利口と言うものです。では、何が其処迄(そこまで)ロシアをして北方四島領有に固執させるのか? その最たる理由は以前にも指摘した事ですが、「圧迫感」の払拭にあると言えるでしょう。それを説明する為、右に二枚の地図を用意しました。上の地図は我々が見慣れた北東アジアの地図です。それに対して下の地図は東を上に90度回転させた地図です。この90度回転させた地図を眺めると、大陸国家ロシアから見た場合、日本海の上から日本列島が漬け物石の様に重くのし掛かっている様に見える事に気付かされます。それに加えて太平洋の大海原へと繰り出す為には、宗谷・津軽・関門・対馬と言った日本の勢力下にある各海峡を通過しなくてはならない事にも気付かされます。まあ、宗谷海峡は現在、日本の稚内と、ロシアが北方四島同様に不法占拠している南樺太(サハリン)との間に広がっている海峡ですから、ロシアがゴリ押し通過をする事が可能ですし、その先、国後・択捉両島を分かつ国後水道(海峡)や、択捉島と中千島の得撫(ウルップ)島とを分かつ択捉水道(海峡)に付いても、北方四島をロシアが占拠している限り、誰憚(たれはばか)る事無く自由に通航可能な海上交通路である事に変わりはありません。詰まり、ロシアにとって、国後・択捉両水道(海峡)は自国船舶 ── とりわけロシア沿地方(プリモーリイェ,外満州,北満州)の中心都市であり、且つロシア海軍太平洋艦隊の母港が置かれているウラジオストク(ヴラヂヴァストーク,浦塩斯徳)から自国海軍艦艇が自由に太平洋との間を往来するのに必要不可欠な訳です。(余談だが、津軽海峡は本来、日本が全域を領海に設定可能だったものを、米海軍艦艇が太平洋と日本海とを往来可能にする為、わざわざ領海を削って国際海峡としたものである。その為、ロシア艦も通航可能だが、日米とロシアの間に有事が発生する様な事になれば、日米 ── とりわけ米軍が海峡を封鎖し、ロシア艦の通航を阻止する事になるだろう) 又、昭和16(1941)年12月16日にハワイ真珠湾攻撃を行(おこな)った大日本帝国海軍機動部隊(第一航空艦隊)が出撃(出港)した事でも有名な択捉島の単冠(ヒトカップ)湾は真冬でも流氷の影響を受けない天然の良港ですが、若(も)しも、日本に北方四島返還後、単冠湾に米海軍が神奈川県横須賀軍港の様に基地を構築したりしたら・・・この懸念からロシアは歯舞・色丹二島の返還には応じても、国後・択捉二島の返還に対してはなかなか応じようとしないのです。

南千島(北方四島)地図
▲南千島(北方四島)地図 (国後水道と択捉島は単冠湾の位置に注目)
択捉島は単冠湾に停泊する日本海軍戦艦「霧島」と空母「赤城」
▲択捉島は単冠湾にてハワイ真珠湾への出撃を待つ大日本帝国海軍第一航空艦隊の戦艦「霧島」(左)と空母「赤城」

それでも尚、ロシアにその気(日本への北方四島返還)にさせる「奇策」とは一体何なのか? その奇策を披瀝する前に、皆さんには少々寄り道して頂こうと思います。

トルコの位置
海峡地帯
 ▲『モントルー条約』が対象としている「海峡地帯」(下拡大)
中国人民解放軍海軍航空母艦「遼寧」
ロシア海軍重航空巡洋艦「アドミラル-クズネツォフ」
 ▲中国空母「遼寧」(上)とロシア空母「アドミラル-クズネツォフ」
「遼寧」と「アドミラル-クズネツォフ」は外観からも分かる通り準同型艦だが、「中国」海軍が「遼寧」を「航空母艦」と称しているのに対し、「アドミラル-クズネツォフ」は『モントルー条約』に基づく海峡地帯空母通航禁止の制約を回避する必要性から、ロシアでは空母であり乍ら、わざわざ「重航空巡洋艦」と称している。
界でも有数の親日国の一つにトルコがあります。アジア東端の日本とアジア西端のトルコの友好関係に付いては、今回のテーマと直接的な関係が無いので割愛しますが、そのトルコは地理的にアジア(オリエント)とヨーロッパ(オチデンント)の両大陸に跨(またが)っており、両地域は北から順にボスポラス海峡(イスタンブール海峡)・マルマラ海・ダーダネルス海峡 ── 通称「海峡地帯」によって分断されています。問題はこれらの海峡で、ボスポラス海峡の外側には黒海、ダーダネルス海峡の外側にはエーゲ海、そして、地中海が広がっている事です。黒海は総面積436,400km2の巨大な内海で、南岸のトルコを起点として時計回りにブルガリア・ルーマニア・ウクライナ・ロシア・ジョージア(グルジア)の6ヶ国が面しています。この内、ロシアは五つある主要艦隊の一つ、黒海艦隊をウクライナ領セヴァストポリ及びロシア領ノヴォロシースクを拠点に配備しており、同艦隊の艦艇がエーゲ海、地中海、そして、大西洋へと出て行く(往来する)為には、どうしても、トルコ領内の海峡地帯を通航しなくてはなりません。直接当事国のトルコからすると、自国領域を他国、とりわけ常に北方からの脅威であったロシア海軍の艦艇が通航する事に強い抵抗感があり、19世紀以来、紆余曲折を経て来た訳ですが、現在は昭和11(1936)年7月20日に締結された『千九百三十六年七月二十日「モントルー」ニ於テ署名セラレタル海峡制度ニ關スル條約』 ── 通称『モントルー条約』によって、ロシア黒海艦隊所属艦を含むロシア海軍の艦艇も通航が認められています。とは言っても、ロシア艦を含む諸外国の軍艦が無制限に通航可能な訳では無く、一定の制限が設けられています。その制限とは、

  1. 航空機の海峡上空の通過制限
  2. 航空母艦(空母)の通航は不可
  3. 口径8インチ(20.3cm)以上の砲装備艦の通航は不可
  4. 同時に通過する軍艦の排水量は総計で1万5千トン以下、10隻未満でなくてはならない。但し、主力艦はこの限りでは無く(空母及び口径8インチ以上の砲装備艦は除外)1隻迄なら排水量に制限は無く、2隻の護衛艦の随伴も許可
  5. 海峡での滞在時間の制限
であり、これによりロシアは、現在唯一保有している空母「アドミラル-クズネツォフ」(基準排水量 55,000t/満載排水量 67,000t)の海峡地帯通航を可能にする為、艦種を一般的な「航空母艦」では無く、わざわざ「重航空巡洋艦」と称して、『モントルー条約』が禁じている空母通航制限条項を躱(かわ)しています。まあ、これは余談ですが、この『モントルー条約』の御蔭でロシア海軍の艦艇は多少の制限があるものの、黒海と地中海の間を通航往来出来ている訳です。此処迄は、トルコ領海峡地帯に於けるロシア海軍艦艇の通航に関する実情をお話しした訳ですが、いよいよ此処からは本題の北方四島の返還問題に付いて論じます。

シアが北方四島、とりわけ国後・択捉両島の返還を渋る理由に付いては前述しましたが、此処(ここ)で今一度、復習の意味も兼ねて指摘します。即(すなわ)ち、ロシアは、

  1. ロシア海軍艦艇が自由にロシア沿海地方と太平洋を往来する為に、国後島と択捉島の間の国後水道と、択捉島と得撫島の間の択捉水道を手放したくない。
  2. 北方四島返還後、日本が択捉島の単冠湾をはじめとする地点に軍事基地 ── 然も、米軍基地を構築する事に対する懸念

海上自衛隊と米国海軍が同居する横須賀軍港
海上自衛隊と米国海軍が同居する横須賀軍港
戦前から大日本帝国海軍横須賀鎮守府が置かれる等、帝都の懐(ふところ)東京湾の玄関口として重要な軍事拠点だった横須賀は、戦後、海上自衛隊が横須賀地方総監部をはじめとする軍事港湾・施設群を置くと同時に、米国海軍も第七艦隊の母港を置いており、日米両海軍が同居する重要な軍事都市である。
国後島の日本語教室で学ぶロシア人の子供達
国後島の日本語教室で学ぶロシア人の子供達
北方四島の日本への返還は単に領土=土地の返還で済む問題では無い。何故ならば、其処に現在住まうロシア人島民がいるからである。返還を円滑に進めるには、ロシアの国家・軍との交渉も重要だが、返還後の現島民に対する様々な民政的施策も必要不可欠である。
を持っているからこそ、日本に対しておいそれとは返還しないのです。と言う事は、逆に言えば、これらロシア側の疑念や不安を払拭しさえすれば、返還に対するハードルも低くなると言う事です。其処(そこ)で私が提案したい事、それは第一に、北方四島返還後も、ロシア海軍艦艇が一定の条件の下(もと)、国後・択捉の両水道(海峡)を通航する権利を認める ── 詰まり、北方四島版の『モントルー条約』を日露間で締結する事。これによりロシアは北方四島返還後も、自国海軍艦艇の日本海と太平洋の往来を保障される訳です。第二に、択捉島の単冠湾に国土防衛の観点から海上自衛隊(以後、「海自」と略)の基地を設置する(但し、米軍基地の設置は認めない)と同時に、ロシア海軍がベトナムのカムラン湾に艦隊寄港地を設置したのと同様、ロシア艦隊の寄港地設置を認める、と言うものです。海自とロシア海軍が一つの湾に同居するのは如何(いかが)なものか?と思われる方もおありかとは思いますが、例えば、現在、横須賀軍港には、海自横須賀地方総監部(帝国海軍時代の「横須賀鎮守府」に相当)をはじめとする日本側の軍事港湾・施設群と、ニミッツ級原子力空母「ジョージ-ワシントン」(満載排水量 104,178t)を旗艦とする米海軍第七艦隊の母港、米国横須賀海軍施設(U.S. Fleet Activities Yokosuka FAC3099)が同居しています。今現在、日露間に日米の様な軍事同盟関係が結ばれている訳ではありませんが、「敵(中国)の敵(日本)は味方」の論理と、日露両国軍(自衛隊は建前上、「軍」で無い事にはなっているが)の交流と信頼醸成により、両国がいらぬ軍事的緊張に陥らない為の「日露デタント」を構築する観点からも、「一つ屋根の下」(単冠湾)に日露両海軍が同居する事は、あながち無意味では無いと私は考えます。そして、第三に、北方四島に住む現島民に対する返還後の地位と権利の保障です。その骨子は、一に返還後も現住地に引き続き居住する権利を認める。(立ち退きは求めない) 二に現島民は返還後、日本国籍となるが、本人の希望により日本国籍と同時にロシア国籍 ── 即ち、日露二重国籍を権利として認める。但(ただ)し、返還後に出生した新生児からはロシア国籍は認めず、日本国籍のみとする。第三に現在の行政単位と住民自治は一定期間保持し、漸次、日本型統治機構に統合していく。その他にも、現実問題としての「言葉の問題」解決(現島民に特化した実用的な日本語教育プログラム)や使用通貨統合(ロシア通貨ルーブリ及びカペイカから、日本円への移行)、物価政策等、現島民の生活に混乱を来さない様、最大限の配慮をせねばならないでしょう。これら日本側の施策により、ロシア国家の威信を傷付けず、ロシア軍の対面を保ち、尚且つ、現島民の日本帰属に対する抵抗を払拭する。ロシアは実効支配する北方四島を日本に返還する事になりますが、日本も返還後のロシア艦隊海峡通航権と寄港地設置を認める訳ですから、双方共に相手国の「独り勝ち」にはならず、この辺りが「落とし処」では無いかと思うのです。

「中国」の現版図と回復す可き「失地」と考えている地域(赤色部分)
「中国」の現版図と回復す可き「失地」と考えている地域(赤色部分)
上の地図は清朝の最大版図に「中国」の現在の版図(領土)を重ね合わせたものである。この地図の内、赤色部分が清朝最盛期以降、他国に割譲・併呑された地域で、現在の「中国」は、この「失地」を回復する事を目標としている。この「失地」の中にはロシア領である沿海地方・ハバロフスク地方・アムール州・ユダヤ自治州、そして、サハリン州(樺太)も当然含まれている。「中国」は同地方奪還の為、先ず「中国人」(支那人)商人を送り込んで商売をさせ、次に労働力として「中国人」労働者を送り込み、地域経済を掌握。不法移民の増加を以て地域人口に於ける「中国人」の比率を上げ、ロシア人の比率を相対的に下げる事で、実質的に「中国人の土地」に変えている。この先には、満州を不法に占拠併合し「中国東北部」にしたのと同様の結末が待っている事を、プーチン政権のロシアも充分承知している。だからこそ、ロシアも対中戦略の観点から、日本との関係強化を望んでいるのだ。
前の小論に於いても指摘しましたが、日本本土から見て北方領土は「日本の鬼門」に相当します。(これに対して、沖縄及び緊張の高まっている尖閣群島は「日本の裏鬼門」に相当する) その鬼門に相当する北方四島の一日も早い返還と、北の海に於けるロシアとのデタント(緊張緩和)は日本の国家安全保障にとっても極めて重要な事は論を俟(ま)ちませんが、それは相手側ロシアにとっても同じ事です。周回遅れでやってきた帝国主義国家「中国」の増長と暴走により国益が損なわれるのは何も日本だけではありません。実はロシアも日本に勝る共劣らず国益が損なわれるのです。その「現実」を現実としてロシアに突き付け、日露両国が北方領土問題で反目する事は単に「中国」を利するだけである事、日露両国が領土問題を解決して平成版「日露協商」を構築する事の方がロシアの国益にとっても遙かに有益である事。その為には、ロシアが実効支配する北方四島を日本に全面返還する必要が不可欠であり、日本も海峡通航権や軍艦寄港地設置を認める用意がある事。これらの条件を提示し、今度こそ何としても北方四島の返還を実現する。その為には、当座、今夏の参院選に於いて与党自民党が衆院選に続き再び勝利し、第二次安倍政権が安定政権の座を確保。その上で、後顧の憂いを除いた安倍総理が満を持してプーチン大統領との直接首脳交渉に臨み、両首脳の「英断」による日露新時代の扉を開く ── 。それらを望みつつ、本小論を締め括りたいと思います。(了)


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