Reconsideration of the History
156.皇位継承は男系男子維持を!! ──「寬仁親王発言」に見る有識者会議の不遜(2005.11.16)

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<寬仁親王>皇位継承資格で「男系男子維持を」と寄稿

 寬仁(ともひと)親王殿下(59)が、自ら会長を務める福祉団体の会報に、皇位継承資格について「(男系で続いてきた)我が国固有の歴史と伝統を簡単に変更してよいかどうか」とのエッセーを寄稿していたことが分かった。小泉純一郎首相の諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が先月一致した「女性・女系天皇の容認」に疑問を投げかけ、「男系男子」継承を訴えている。

 今年1月に有識者会議が発足して以降、皇室典範改正問題に関して皇族の考えが明らかになるのは初めて。福祉団体「柏朋会」(東京都港区)が発行している「ざ・とど」の第88号(9月30日発行)で、「とどのおしゃべり―近況雑感―」と題したエッセーで触れた。

 まず、「本来は首相傘下の審議会に諮られていますので政治問題であり口出しできないが、本会報は市販されておらず、“身内”の小冊子と理解し、“プライヴェート”に語るという体裁をとります」と記述。

 「万世一系、125代の天子様の皇統が貴重な理由は、神話の時代の初代・神武天皇から連綿として一度の例外もなく『男系』で今上陛下まで続いてきているという厳然たる事実です」と男系男子継承を求めた。

 そのための具体策として、(1)元皇族の皇籍復帰(2)女性皇族に養子を認め、養子に皇位継承権を与える(3)廃絶になった宮家(秩父宮、高松宮)の祭祀(さいし)を元皇族に継承してもらい再興する(4)側室制度の復活――を挙げている。

 寬仁親王殿下は天皇陛下のいとこにあたる。【遠山和彦】

(毎日新聞) - 11月3日19時15分更新
配信元URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051103-00000041-mai-soci

れは、今上(きんじょう)天皇の従弟(いとこ)に当たる寬仁親王殿下(下系図参照)が、現行法に於いて「政治的発言を許されない」皇族の身分に鑑(かんが)み、敢えて「プライベートな発言」と言う体裁を採って為された、『皇室典範』改正問題=皇位継承問題に対する皇族としての初の意見表明を伝えた記事です。

現在の皇室略譜

少なく共、この「寬仁親王発言」が波紋を呼び、小泉総理が目論んでいる「皇室典範に関する有識者会議」(以下、単に「有識者会議」と略)による11月中の最終報告提出、来年の通常国会への『皇室典範』改正案提出による、現行典範の強行改定と言うシナリオに微妙な狂いが生じ始めた事だけは確かでしょう。

皇室典範改正案 通常国会提出慎重論も 寬仁さま「発言」波紋広がり

 皇位継承資格者(継承順位五位)である寬仁親王殿下が、政府の「皇室典範に関する有識者会議」が打ち出した女性・女系天皇容認の方針に疑問を呈されたことが波紋を広げている。有識者会議の運営には、従来「当事者である皇族の意見を聴かないのか」「なぜ結論を急ぐのか」などの指摘があったが、寬仁さまの「発言」を受け、拙速を危ぶむ声が高まっている。有識者会議は七日に会合を開き、今月中にも最終報告をとりまとめる方針だが、来年の通常国会に皇室典範改正案提出をめざす政府のシナリオにほころびが生じる可能性もある。(阿比留瑠比)

 寬仁さまが、会長を務める福祉団体の会報に書かれたコラムは、「プライベート(私的)に語る」という体裁をとりながらも有識者会議の論議に真っ向から「異議」を唱えたものといえる。

 有識者会議は発足時から、女性・女系天皇容認論者が複数いる半面、皇室制度の専門家がほとんどいないなどメンバー構成が偏っており、「はじめに女性・女系天皇容認の結論ありき」(研究者)といわれた。

 一方、皇族内に、男系継承を重視する意見があることも知られていたが、有識者会議の吉川弘之座長(元東大総長、ロボット工学専攻)は「(皇族方の)意見を聴く考えは全くない」「意見を聴くことは憲法に反する」などと発言。どの条文に反するか根拠は示さないで憲法違反だと主張し、意見聴取はしない考えを強調してきた。

 吉川氏は「聴いてはいけないという政府の判断だった」ともするが、小泉純一郎首相は記者団に「(意見聴取は)憲法違反ではないでしょう。どんな方の意見だって、個人が発言するのは自由だから」と否定している。

 また、新内閣では、安倍晋三官房長官がもともと女系天皇容認に慎重とされるほか、麻生太郎外相は寬仁さまと縁戚(えんせき)関係にあり、この問題では考え方が近いという。

 寬仁さまの意見表明について、政府内には「参考にはしないだろう。それが役人ってものだ」(首相周辺)との見方もあるが、「有識者会議の議論は、確かにハイペースで進みすぎている。皇室典範改正案の通常国会提出は見送った方がいいだろう」(高官)という慎重論も出始めている。

 男系継承維持派の民間有志でつくる「皇室典範問題研究会」代表の小堀桂一郎東大名誉教授は、「有識者会議は寬仁殿下のご意見を真剣に受け止め、結論を急ぐべきではない。皇族のご意見を聴かないというのは思い上がった態度であり、元皇族の皇籍復帰などをなぜ真剣に検討しないのか」と話している。

 福祉団体「柏朋会」の会報に掲載された寬仁親王殿下のエッセー「とどのおしゃべり−近況雑感」の要旨は次の通り。

  • 世界に類を見ないわが国固有の歴史と伝統を平成の御世でいとも簡単に変更してよいのかどうか。
  • 万世一系、百二十五代の天子様の皇統が貴重な理由は、神話の時代の初代神武天皇から連綿として一度の例外もなく、『男系』で今上陛下まで続いてきているという厳然たる事実です。
  • 皇室典範を改正し、(1)元皇族の皇籍復帰(2)女性皇族に養子を元皇族(男系)からとることができるよう定め、その方に皇位継承権を与える(3)元皇族に廃絶になった宮家の祭祀を継承していただき、再興する−などの方法を駆使してみることが先決だと思います。
(産経新聞) - 11月7日2時49分更新
配信元URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051107-00000003-san-pol

は今年になってから、この「歴史再考」に於いて四回に亘(わた)って皇位継承問題に付いて論じ、その都度、小泉総理が設置した、あくまでも「私的諮問機関」でしか無い有識者会議のメンバー構成(何を以て皇室問題に関する「有識者」と定義したのか?)、位置付け(どの様な権限があると言うのか?)、議論の進め方(原則非公開による密室会議)に疑義を唱えてきた訳ですが、遂にと言うか、当然と言う可(べ)きか、「当事者」である皇族、然(しか)現行典範に於いて皇位継承有資格者である寬仁親王が発言したのですから、我々の様な下々(しもじも)の者が言うのとは「重み」が違います。

成の御世(みよ)にあって、やれ男女平等だの、やれジェンダーフリーだの、と声高(こわだか)に叫び、

何故、女性皇族が天皇になれないのか?

男女の別に関係無く第一子を皇太子にすべきだ

と言った事を、さも当然の如く主張する輩(やから)がいますが、何故かと言えば、それは、

男系による皇位継承が日本の伝統

だからです。

戦国時代末期、出雲(いずも)の阿国(おくに)が始めたとされる「歌舞伎」は寬永6(1629)年、承応元(1652)年と二度に亘ってに出された江戸幕府による禁令に依って、女役者は御法度(ごはっと)となり、以来350年、今日に至る迄、男性役も女性役も全て男役者が演じています。これは、れっきとした日本の伝統です。

又、史上初、前人未踏の七連覇を目指す横綱・朝青龍と欧州勢初の大関を目指す関脇・琴欧州の話題で持ち切りの大相撲九州場所。この大相撲も江戸時代以来の日本の国技である訳ですが、土俵に上がれるのは男性のみ。女相撲の関取はおろか、以前、春場所(大阪場所)に於いて表彰の為に上がろうとした太田房江・大阪府知事でさえ、「女性である事」を理由に土俵に上がる事は出来ません。矢張(やは)り、これも日本の伝統です。

「伝統」が何なのだ!! 時代に即して伝統も変えていく可きだ!! と言った事を言われる方もいるでしょう。では、例えば、フェリス(フェリス女学院)はどうでしょう? 同校の小塩節・理事長は自身のメッセージの中で斯(か)く述べています。

「フェリス女学院が1870年に、日本最初の女子の学校として創立されて以来、横浜山手の丘の上に立つ名門中の名門校であることは、改めて言うまでもありません。共学制を採らぬのは、女子校でのみ可能な女性の自立性とリーダーシップの確立のためです。」

私は何もフェリスが今尚(いまなお)(かたく)なに守る「男子禁制」を批判する積もりは毛頭ありません。何故なら、それがフェリスの「伝統」だと認めているからです。聖心(聖心女子大学・聖心女学院)しかり。お茶大(お茶の水女子大学)しかり。まだまだ、周囲を見渡せば、「男子禁制」等幾(いく)らでもあります。「すみれの花咲く頃〜♪」で有名な宝塚歌劇団。この歌劇団は男子禁制はおろか、更に「未婚女性」でなければ入団出来ません。これもれっきとした「伝統」です。これらの「伝統」を皆さんは、謬(あやま)った男女平等観念やジェンダーフリー思想によって、変えたいと思いますか? 歌舞伎の女形(おやま)を女優が演じ、大相撲の土俵上に女力士が上がる。フェリスも聖心もお茶大も皆、男女共学にし、「ベルばら」(ベルサイユのばら)のオスカルとアンドレを男優が演じる・・・私は、ある種の空恐ろしさすら覚えます。

系による皇位継承を頑なに守ってきた皇統を、時の総理と、その総理が恣意的に選んだ「ど素人集団」(少なく共、私は顔ぶれを見る限りそう断じざるを得ない)に斯くも簡単に改変させて良いものなのか? 二千年以上の歴史を有する日本の伝統中の伝統である皇位継承法を、当事者である皇族の意見を聴かずして進めて良いものなのか? 有識者会議の座長である吉川弘之・元東大総長は斯く述べています。曰(いわ)く、

(皇族方の)意見を聴く考えは全くない

と。仮にも東大の総長を務めた人物です。その様な御仁が、それこそ皇室に対する不遜 ── 正に「不忠の極(きわ)み」と指弾されても弁解の余地の無い発言をした訳で、この様な御仁を座長に構成されている有識者会議の結論を受け入れる事等到底出来ない訳です。

不遜(ふそん) 謙遜で無い事。思い上がっている事。「―な振舞」(『広辞苑』より)
更に言えば、この様な皇室に不遜な有識者会議を組織し、先の衆院選に於いて、「造反組」の一人であった亀井静香候補に対する「刺客」として、

「今の世の中、ネットの普及で変化のスピードが速くなっているから、どの組織でもリーダーが強力な権力を持っていないと対応していけないと思うんです。日本が明治時代に英国の立憲君主制を導入したのは、たまたま天皇がいたからで、国家の経営を考えたからではないじゃないですか」

だいたい憲法が『天皇は日本の象徴』というところから始めることに違和感がある。 天皇は実際のところ象徴だけ。別に権力があるわけじゃないし、(国民は)誰も気にしてないでしょう。歴代の首相や内閣が(象徴天皇制を)何も変えようとしないのは多分右翼の人たちが怖いからだと思う。」

と、天皇不要・大統領制導入論を口にする様な「ホリエモン」(堀江貴文氏)を暗に応援した、時の宰相・小泉純一郎氏。彼(か)の第六天魔王・織田信長に心酔し、「日本国初代大統領」の座を狙っている等と噂されている小泉氏。若(も)しも、彼が位人臣(くらいじんしん)を極めた「内閣総理大臣」のポストでは飽き足らず、天皇・皇室を差し置いて、国家元首としての「日本国大統領」を標榜しているのだとすれば、有識者会議以上の「不忠の極み」。一昔風に言えば、

朝 敵

と言っても過言ではありません。まあ、実の所、どうなのかは分かりかねますが、何(いず)れにせよ、今回の「寬仁親王発言」を小泉氏・有識者会議共に真摯に受け止め、皇室問題に詳しい人士を広く募り、その上で「日本の伝統中の伝統」である皇位継承法に付いて議論を尽くしていく可きです。そして、その中には、当然、「当事者」である皇族も含める可きですし、それが自然な流れと言えるのでは無いでしょうか?


   余談(つれづれ)

本の「天皇」は海外では、「皇帝」を意味する Emperor(エンペラー)と呼ばれています。そして、国際儀礼上では、諸外国の国王・君主よりも格上。「唯一の超大国」と言われる米国の大統領よりも格上。(詰まり、胡錦涛(フー=チンタオ)支那国家主席や、盧武鉉(ノ=ムヒョン)韓国大統領よりも当然格上) 更には、ローマ=カトリック(キリスト教)を束ねるローマ教皇(法皇)と同格、若しくは格上と見なされ、世界で唯一、自国に来訪したローマ教皇を滞在先に訪ねる事無く、逆に王宮(皇居)に足を運ばせる事が出来る存在なのです。それもこれも全て、日本の皇室が世界でも希有(けう)な最古最長の王朝だからなのです。

位継承は男系男子に限る ── 男女平等論者やジェンダーフリー論者、はては、コミュニスト(共産主義者)や在日等が異を唱える日本の皇位継承法の変革等、論外です。理論や理屈で云々出来る様な次元の話では無い訳です。そして、世界が羨(うらや)む様な「最古最長の極めて権威ある王朝」=日本の皇室は、正に日本国家・日本国民至高の「宝」(財産)であり、この「宝」を一部の輩の弄(ろう)す世迷い言(よまいごと)に惑(まど)わされる事無く、千代に八千代(やちよ)に守り続けていく事こそが、日本国民の責務であり、日本の国力の源泉である、と言う事を強く認識する可きです。


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